8.だから絶対、助け出す!

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「……うん。待ってる」 【改ページ】 ▲▽    時刻は深夜0時を回っている。いつの間にか、日付けは、生け贄の儀式が行われる予定の日になっていた。  アカネはベッドの上で、何度目か分からない寝返りを打った。  大好きな姉――アヤメがツバキの身代わりにされ、生け贄にされてしまうなど、耐えられないことだった。  だから、時也の計画をアヤメに教えたのだが、まさかそのことで、アヤメが時也と逃げるだなんて言い出すとは、思いもしなかったアカネだ。  姉さんが遠くに行ってしまう。  アカネにとって、アヤメが自分から離れてしまうことの方が、よほど耐え難いことだった。  ゴロゴロとベッドの上を転がっているうちに、ようやく一つの答えにたどり着いた。  ――お父さんに話してしまおう。そして、姉さんを連れ戻してもらうんだ!  かくして、アカネの話を聞いた彼らの父親は、村人たちに時也とアヤメの行方を捜すように命令を下した。  その手に銃を持って……。  彼は、アカネの話を全て聞いていたので、この時、時也と一緒にいる少女はアヤメだと信じて疑わなかった。 「そのうち、どこかの金持ちに嫁がせようと思っていたが、なんて恥知らずな。よりによって画家なんかと駆け落ちするとは」  と、苦々しく言い捨てたのだ。  彼にとって、娘はツバキにしても、アヤメにしても、御家発展のための手駒だった。  それでも、生け贄に捧げるツバキなら銃まで取り出さなかっただろう。 
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