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ツバキは、直久の手に鍵を押しつけた。それを受け取って、直久は、はっとする。
ツバキの手の甲に火傷の傷があったのだ。数久の護符と同じ形の火傷の傷が!
アヤメの手の甲にあった者よりも、ずっとひどい傷だった。
どういうことだ?
訳分からずツバキの顔を見ると、もはや死人のように血の気がない。
直久は黙って頷くと、鍵を強く握り締め、その場から駆けだした。
直久が遠くなっていくのを感じながら、ゆっくりとツバキは目を閉じた。
確かに、私とアヤメは別の人格の人間。
だけど、他人とは持ち得ない繋がりを持っている。自分と相方との区別をあやふやにしてしまうような何かを。
そして、それが、相方を、もう一人の自分と呼ばせていた。
ツバキは手の甲の傷のことを思う。
だから、自分だけが幸せなのではいけない。
もう一人の自分も幸せでなければ、本当に自分が幸せであるとは言えないのだ。
アヤメも自由にしてあげて!
アヤメを解き放って!
アヤメを幸せにして欲しい。
アヤメは私。
私の光。
私ではない私。
私とはまるで違う少女。
アヤメはアヤメ。
どうか、彼女を見つけて。
お願いだから、どうか、彼女だけを見つめて欲しい。
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