9.青空が広がるその下で

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 数久は口元に手を持っていき、親指で下唇をなぜる。 「ツバキさんもアヤメさんも、あの部屋に誰かを身代わりに入れなければ出られないと思い込んでいた節があるんだ。特にツバキさんは、アヤメさんを自分の身代わりにして時也さんと逃げようとしていたわけで、身代わりがいなければ自分が逃げたのがすぐばれてしまうという生前の思いが深い。強く思っていたことって、死んだ後も残ることがあってね。しかも、不完全な記憶として残ることが多くて、ツバキさんの場合、怨霊となってしまったから、アヤメさんをあの部屋連れ出すためには、他の誰かを身代わりに入れなければならないと、強く思い込んじゃったみたいなんだ」 「要するに、ツバキはアヤメさんをあの部屋から自由にしてやりたくて、身代わりに紫緒さんたちの魂を部屋に引き込んだってわけだな」 「そう。だから、直ちゃんが扉を開けたとたん、いくつもの魂が部屋から解放されて、飛び出て行ったのが見えたよ。紫緒さんも同じ頃、意識を取り戻したしネ」  直久は、ふーんと頷くと、一息付いて、 「あとさぁー、火傷の傷がアヤメさんにもあったのって?」  と、尋ねた。すると数久は眉を歪ませた。 「それは、双子の神秘としか言いようがないね。やっぱりね。一人一人別々の人間と言っても、元は一人の人間として生まれてくるはずだったのだから、どこかで繋がっているんだよね。――よくあるでしょ。僕が気分が悪い時、直ちゃんまで気分が悪くなったりするのって。直ちゃんが怪我したところと同じところに、僕自身は覚えがないのに傷が付いてるとか……」 「あるある、あれ不思議だよなぁ〜」
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