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「同じことが、ツバキさんとアヤメさんに起こったんじゃないかなぁ?」
数久は少し俯く。
「そんなことがあるから、自分たちが同じものだなんて思ってしまうんだよ。だから、ツバキさんはどうしてもアヤメさんをあの部屋から出したかったんだね。アヤメさんがあの部屋に閉じ込められているうちは、自分までも閉じ込められてしまっているから」
ツバキのそんな想いが何人もの少女を犠牲にしたのだ。
直久は黙って、数久の肩に優しく手を置いた。
オーナーと話を済ませたゆずるが、怠そうに、鞄を担ぎながら双子の方に歩み寄って来た。
無造作に突っ込まれた茶封筒がコートのポケットから覗いている。
「行くぞ」
擦れ違いざまに短く言って、ゆずるは先に玄関をくぐった。追って直久と数久も外に出る。【改ページ】
直久が銀世界の眩しさに目を細めた時、妃緒が三人を呼び止めた。
振り返ると、妃緒の後ろに日本人形のように綺麗な少女が静かに立っているのが見えた。
ドキッとして、直久はその少女を見つめる。すると、しっかりとした瞳で見つめ返される。
「お姉ちゃんが直久さんにお礼が言いたいんだって」
「お礼? 俺に?」
人差し指で自分を指すと、紫緒さんはコクリと頷き、すーっとあの鍵を直久に差し出した。
「これを。どうか、直久さんがお持ちください」
「だけど」
「忘れないで欲しいのです」
直久がまごまごしているうちに、紫緒は無理矢理、直久の手に押しつけた。そして、微笑んだ。
眩しいほどに綺麗で、可愛らしい。
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