10 心温まる日々

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10 心温まる日々

2日後、ゼルゼディス様の解雇通達が宮廷から届いた。 「ゼルゼディス様… ごめんなさい… 私のせいで…」 私は鎮痛な面持ちで解雇通達を見る。 「いえ、これで畑作業や釣りがはかどりますよ。 そんな顔しなくても大丈夫ですから。 それに私が居なくなって困るのは、さぁ、どちらでしょうねぇ…?」 意味深な事を言うゼルゼディス様。 「え…? それはお金が減るので…困るのはゼルゼディス様…なのでは…?」 私は遠慮気味にだがそう言ってみる。 「そうですね…! 私の方でした! ははっ!」 ゼルゼディス様は笑ってそう言った。 ? しかし、私に何かを言いたそうでもあるように見えた。 「ゼルゼディス様、何か…」 「さぁ、畑に行きましょう! 生ゴミ堆肥の様子を見なくては!」 私の言葉はゼルゼディス様の言葉にかき消され、私は何となく気になりながらも、畑に向かった。 畑の生ゴミ堆肥を掘り起こすと、発酵がかなり進んでいた。 私たちは力を合わせて畑に生ゴミ堆肥をまぶした。 そして、じゃがいもとにんじんを植えると、お茶を飲み一休憩した。 「ふぅ… これで野菜が育つといいけれど…」 私がお茶を飲みつつ言う。 「そう言えば…」 ゼルゼディス様。 「どうかされたのですか?」 「いえね、その、結婚式をその挙げてないなぁと…」 ゼルゼディス様は少し赤くなってそう言った。 しかし、結婚式など挙げるお金はどこにも無いはずだ。 結婚式と言えば、純白のドレスにタキシードに… 「私に気を遣っているなら、大丈夫ですわ。」 「いえ、私があなたのドレス姿を見たいというか… いえ、せめて結婚式くらいは…」 「でも、そんなお金は…」 「一応貯金がありますよ。 そんなに豪勢な結婚式は無理ですが…」 ゼルゼディス様は言う。 「そりゃあ、めでてぇ! ゼルゼディス様の結婚式となれば領民が押し寄せますで! わしの貯金も使ってけろ!」 お爺さんが言う。 「お爺さん…」 私は感動した。 こんなにも温かい気持ちになったのは、いつぶりだろうか? 「ありがとうございます。 でもお気持ちだけで… その代わり、結婚式に並べる料理の野菜を分けてくださいね。」 ゼルゼディス様が笑顔で言った。 そうして、そんな心温まる日々を過ごしながら、結婚式に向けて準備を始めようとしていた。 ♦︎ じゃがいもとにんじんを植えてから、1週間後。 お爺さんの畑にはわしゃわしゃとじゃがいもとにんじんが育っていた。 お爺さんはたいそう私たちに感謝して、沢山のじゃがいもとにんじんを分けてくれた。 「これで、結婚式のシチューの材料が手に入りましたね!」 ゼルゼディス様も嬉しそうだ。
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