15 商売始めませんか?

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15 商売始めませんか?

私達は卵焼きとベーコンの朝食を食べた。 「ねぇ、ゼルゼディス様。」 「何ですか?」 「宮廷魔導士も辞められた事ですし、収入がほとんど無いのですよね?」 私は遠慮なく言う。 「そうですね。 野菜ならば、領民が沢山持ってきてくれますけど、それだけでは生きていくだけで精一杯でしょうね…」 ゼルゼディス様も頷いた。 「でしたら、商売をしてみたらどうでしょうか?」 「商売…ですか…? しかし、売る物もありませんし…」 ゼルゼディス様は困惑気味に答えた。 「この卵焼きを売ったら良いと思いますわ!」 「え? 卵焼きを…?」 「えぇ、出来たての卵焼きを隣町で売ったら結構人気が出ると思いますの!」 私は張り切って言う。 「うーん… しかし、出来たての食べ物を売るとなると、魔法簡易キッチンくらいは無いと…」 ゼルゼディス様が考え込む。 恐らく結婚式でお金を使った為に、もう貯金は無いはずだ。 「私の貯金がありますわ。」  私は言った。 「えぇ…!? でも、それはあなたの大切な…」 「夫婦になったのですから、私の貯金はゼルゼディス様の物でもあるのです。 ぜひ、魔法簡易キッチンを買うのに使いましょうよ。」 私は言った。 「でも、あなたは最近化粧品も切らしてて… いえ、素顔でも美しいですが。 着るワンピースもいつも同じだし… それでも輝いてますが。 私の為にそこまで…」 ゼルゼディス様はさりげなく私を褒めているが… 「私にはもう化粧品も煌びやかなドレスも必要ありません。 それでも幸せなのですから。」 私は微笑み言った。  「エシャロット…」 何だかゼルゼディス様の瞳は潤んでいるようだ。 「早速、簡易キッチンを買いに行きましょう! 行きたく無いけど、王都に行かなくては…!」 私は食器を片付けながら、そう言った。 そうして、また馬車で王都サルベアに向かったのだった。 ゼルゼディス様が宮廷魔導士を辞めたのにも関わらず、頻繁に王都に行っている私たち… まぁ、仕方ないか。 そんな事を思いながらも、2日後に王都サルベアに到着した。 魔道具屋さんに入り、魔法簡易キッチンを選んだ。 「1番安いので良いですよね?」 ゼルゼディス様はどうも根っからの貧乏性らしい。 「安いのはすぐに壊れますわよ。 この中間のお値段のにしましょう。 折りたたみ式だし、持ち運びも楽ですわ。」 という訳で、その魔法簡易キッチンを買った。 帰り際… また、2日間あの馬車に揺られるのか… そう思った。 私はどうも酔いやすい体質らしく、馬車はそんなに好きではなかった。 すると… 「ねぇ、エシャロット。 たまには空の旅を楽しみませんか?」 ゼルゼディス様はにっこりと笑ってそう言った。
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