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18 その頃の王都
sideシャンク
俺はサルベアント国の第1王子、シャンク=サルベアント。
その日魔導士団の長ドルモッドが王の間にやってきた。
「どうした?
つい先日も報告に来たばかりであろう?」
俺は訝しげにドルモッドに確認する。
「はっ!
恐れながら申し上げます!
今日の昼過ぎ、王都サルベアの西門より魔物が入り、死者1名と重症者2名が出ております!」
ドルモッドは王の間に野太い声を響かせながら言った。
「またか…!」
俺の第一声はそれだった。
そう、またなのだ…
最近、ここ3週間ほどだろうか…?
王都やその付近の街に魔物が入り込み、人を襲うという報告が上がり始めた。
「原因はまだ分からぬのか…!?」
つい声を荒げてしまう。
「はっ…
原因と言われましても、特に最近変わった事は無かったはずで…」
ドルモッドは恐る恐る言う。
「馬鹿者!
原因があるから、こういう結果が付いて来ているのだ!
と、とにかく、俺の戴冠式までに原因を探り当てよ!
さらに、宮廷魔導士団には定期的な王都のパトロールを申し渡す!」
俺は言った。
「はっ!
承知致しました!」
ドルモッドはそれ以上俺の機嫌を損ねてはまずいと感じとったのか、そこで王の間から下がって行った。
しかし、妙だな…
なぜ、急に魔物が街に入り込むのか…?
3週間前…
3週間前…?
いや、特に変わった事は何もなかったはずだ。
そう言えば…
3週間前というと、アリアがエシャロットに会いに行った頃だな…
まぁ、関係は無いだろうが。
その時、「シャンクさまぁ」という甘ったるい声がして、アリアがやってきた。
「なんだ?
俺は忙しい。」
「そんなぁ!
私たちの正式な婚約発表舞踏会はいつにされますのぉ?」
「その話か…
おいおい決める。
お前は黙って待っておれ。」
俺は冷たく言い放った。
最初こそ、アリアの肉体に溺れていたものの、最近ははっきり言って飽きてきていた。
いや、正直に言えば、飽きる以上にアリアの甘えた声に辟易としていた。
エシャロットであれば、こんな見え透いた媚びは売らなかっただろう…
なぜ、俺はエシャロットを手放したのか…?
まぁ、それも過ぎた事だ。
アリアに飽きたのであれば、別の女を囲うまでだ。
アリアは俺の機嫌が悪いのを察知して、どこかに消えて行った。
さて、街に侵入する魔物事件をどうするか?
次期王としての俺の手腕も問われるだろう。
庶民はどうせ自分の事しか考えてないアホウばかりだからな。
そして、俺はしばらく息抜きをする為に高級娼婦を呼んだ。
その頃の俺はまだ王都は平和だと信じていたのだ。
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