19 卵焼き屋始動!

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19 卵焼き屋始動!

そして、その日の朝から私達はバタバタしていた。 野菜や卵を専用の魔法冷蔵バッグに詰め、魔法簡易キッチンを折りたたみ、ゼルゼディス様が背負った。 そう、卵焼き販売の開始の日だ。 ここは辺境の領地だが、ここから馬車で1時間行った所に隣街があり、結構賑わっているのだ。 そこに出稼ぎに行くというスタンスだ。 馬車に荷物を積み込み出発して1時間後。 隣街ネザレイヤに到着した。 「しかし、どこで卵焼き屋をするんですか? ヘタな街路でしたら、通報されそうですし…」 「ネザレイヤにはバザー会場がありますわ! もちろん、場所代に1000ルナ要りますけど、もっと儲かれば良い話ですわよ! ゼルゼディス様!」 私は気合いの入った顔で言う。 「は、はい…!」 ゼルゼディス様が背筋を伸ばして答える。 「良いですか? 商売というものは、やる気と根性が必要ですの。 情けない声なんて出してたらお客様が逃げちゃいますわ! 腹から声を出すのですよ!?」 私は厳しく指導する。 「わ、わ、分かりました…! 鬼先生…!」 誰が鬼先生よ、誰が… しかし、ツッコむのも面倒くさいので、私はバザー会場の受付に向かった。 「はい、1日1000ルナでお貸ししております。 前金になりますが、よろしいですか?」 受付のお姉さんが言う。 「えぇ、問題ないですわ。」 私は残りの貯金から1000ルナ支払った。 これで私の貯金はほぼゼロだった。 「さぁ、やりますわよ!」 私は気合いを入れて言う。 魔法簡易キッチンを組み立て、普通の卵焼きとにんじん入り卵焼きを焼いていく。 「ほら、ゼルゼディス様、売り込みやって下さい。」 「えーと… へぃ…らっしゃいらっしゃい… 美味しい卵焼きは…」 メモを見ながら呟くゼルゼディス様。 ダメだわこりゃ… 私はゼルゼディス様に卵焼きを任せて店頭に立つ。 「へい! らっしゃいらっしゃい! 美味しい卵焼きはいかがですか!? 甘くてしょっぱい、美味しい卵料理だよー!!!」 少しだけ人が集まってきて、私に卵焼きとは何か?と聞いている。 私は素早く試食用の細切れの卵焼きを差し出した。 「まぁ、美味しい!」 「はぁ~…綺麗な黄色やなぁ~」 「こっちにも一個頂戴!」 「じゃがいも入りが良いで!」  そして、卵焼きは徐々に火がつき、最後は飛ぶように売れて行った。 "売り切れ"と大きく書いて店に貼ると、ゼルゼディス様と売り上げ金の計算をし始めた。 売り上げ、な、な、なんと! 1万8000ルナである…! 「エ、エ、エシャロット…! お、お、お金が…!」 ゼルゼディス様はどうも大金に驚き過ぎているようだ。
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