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2 貧乏魔導士様との婚約
ゼルゼディス様の領地は遠く、馬車で2日かかる。
最初こそ馬車は平気だと思っていたものの、舗装の無い砂利道を通り、私は馬車に酔っていた。
「エシャロット様、大丈夫ですか…?」
ゼルゼディス様が声をかける。
「え、えぇ、大丈夫です…」
意地っ張りな私はそう答えてしまう。
妹のアリアだったら、あの丸っこい瞳に涙を溜めて馬車を止めさせるだろう。
そんな事を思いながら、気分の悪さと戦っていた。
「あなたという人は…
まったく…」
ゼルゼディス様はそう言いため息を吐くと不思議な呪文を唱え始めた。
『ウィンド、ウォーター、トゥリー、アース…少しの力を貸し、エシャロットを癒やしたまえ。』
すると…!
途端に私の胃はスッキリして、身体も軽くなり、酔いが吹き飛んだ。
「これは…?」
「ははっ。
皆が使える低級魔法ですよ。
でも、効いた様で良かった。」
ゼルゼディス様はにっこりと笑った。
ゼルゼディス様の髪は銀色に輝いているし、顔立ちも端正だ。
いや、今更だが。
まぁ、だからと言って何だ?と言われると、特に何の感情も持たないのだが…
「ありがとうございます…」
私はお礼を言い、外の景色に目をやる。
「………」
そんな私をゼルゼディス様は何故かじっと見ていた。
そんなに婚約破棄されたご令嬢が珍しいのだろうか?
いや、珍しいのだろう。
そんな話は聞いたことが無い。
♦︎
そして、2日後、ゼルゼディス様の領地に着いた。
「ゼルゼディス様ー!
芋が取れましたで!
持って行きますがね!」
貧しそうな農民達は、しかし、ゼルゼディス様を慕っているようで、みんな馬車に向かって手を振った。
そして、馬車はオンボロ屋敷にたどり着いた。
貧乏とは聞いてはいたが、これほどとは…
私達は馬車を降り、屋敷に入った。
うーん、ボロい…!
柱などは少し腐っているようだし、所々床がミシミシ言う。
「ゼルゼディス様…?」
「何ですか?」
「あのぅ、主が帰ってきたのに、使用人達が出迎え無いようですが…」
私は言う。
「あぁ、使用人は居ないのです…」
ゼルゼディス様がしょぼんとして答える。
「しかし、腐っても…失礼!
宮廷魔導士ならば…」
「私の財力では使用人を雇うお金などありません。
でも、あなたには不自由ないように頑張りますから…
どうか、見捨てないで下さい…!」
ゼルゼディス様が頭を下げるので、私は慌てて言った。
「いえ、こ、こ、これから力を合わせて頑張りましょう!」
「ありがとう…
エシャロット…」
ゼルゼディス様は安心したように美しく笑った。
何となく赤面してしまう、私。
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