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3 その日の初夜
「お疲れですよね?
薪をくべてお風呂を沸かしますから、入って下さいね。」
ゼルゼディス様が私を気遣い言う。
そんな下働きの男のような事までするのか…
と、ちょっとびっくりしたが、顔には極力出さなかった。
「…ありがとうございます。」
そして、お風呂に入り手と足をぐんと伸ばして考えた。
しかし、妹のアリアがシャンク様に取り入った事など気づきもしなかった…
昔から、鈍感だと妹に馬鹿にされていたのは、こういう所なのか…?
だが、私はアリアとシャンクを許せなかった。
それはそうだろう。
いつの日かギャフンと言わせてみせる…!
そう心に強く誓ったのだ。
私はお風呂から上がると用意してあったバスローブに着替えた。
「あ、あぁ、どうでした?お湯?」
少し赤くなりながら、ゼルゼディス様が尋ねる。
「えぇ、気持ち良く…
ありがとうございます。」
「えーと、その、寝室なのですが…」
「えぇ、私の寝室はどこですか?」
「私と一緒では嫌ですか…?」
ゼルゼディス様が尋ねた。
「え、あの…」
私が言葉に詰まっていると…
「いえ、その、床が腐ってまして…
他の部屋のベッドは洗ってもおりませんし…」
ゼルゼディス様が説明する。
あぁ、そういう事ね…
「ゼルゼディス様が良いのであれば一緒の部屋でも構いませんわ。」
そうだ、彼と夫婦になるということは、覚悟は出来ている。
「あの、私はリビングのソファに寝ても良いのですよ。
そんなに嫌ならば…」
「いえ!
一緒に寝ましょう!」
私は言って、ゼルゼディス様の寝室に入った。
グレーの絨毯に、壁際に白の本棚があり、大きなベッドが1つポンっとある。
確かにこの部屋は綺麗なようだ。
しかし、ベッドも1つしか無いので、あぁそういう事よね、と思った。
私はベッドに入った。
ゼルゼディス様が私の隣のシーツをめくり、入り込む。
しかし、ゼルゼディス様はこう言った。
「何もしませんから、安心して眠ってください。」
え、何もしないの…?
すっかり拍子抜けである。
「でも、これって一応初夜なのでは…?」
私が尋ねると、ゼルゼディス様は悲しそうに笑った。
「他の男性を想うあなたを抱くことは出来ませんよ。
でも、そうですね、その内もし私を心から想ってくれたら…
その時には遠慮なく…
おやすみなさい、エシャロット。」
そう言ってゼルゼディス様は私の額に軽くキスをした。
途端…!
私は急激に眠くなって深い眠りについたのだった。
その日、どんな悪夢を見るかと思っていたが、眠りは深くどんな悪夢も見なかった。
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