8 僻み・妬み・コンプレックス

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8 僻み・妬み・コンプレックス

sideアリア 私は姉が大嫌いだった。 ハニーゴールドに光る三日月型の瞳に、ハニーゴールドの艶めく髪の毛。 私が必死に媚を売っても、男は皆エシャロットになびいた。 男達が口を揃えて言うのは、『アリアも可愛いけれど、エシャロットには清潔感がある』だそうだ。 清潔感? 何なのそれ? 不潔で悪かったわね! 私になびいていくるのは、Eカップの胸に目が眩んだ身体目当ての男ばかり。 第1王子シャンク様でさえ、エシャロットにゾッコンだった。 私もシャンク様を慕っていたのに… しかし、ある日、貧乏宮廷魔道士のゼルゼディスとかいう奴が私に囁いたのだ。 「エシャロットと結婚させてくれるならば、あなたの恋に力を貸す」と… 何やら彼が言うには、ゼルゼディスは恋の魔術を使えるらしい。 半信半疑だった。 だけど、このまま日の当たらない妹として人生を終えるのは嫌だった。 私は彼と契約した。 魔法文字で書かれた契約書にサインして(内容はよく分からない)、シャンク様に近づいた。 シャンク様はゼルゼディスの言う通り私の虜となった。 私は、ゼルゼディスとの契約通り、エシャロットを彼と結婚させるように仕向けた。 そう命じた時のゼルゼディスの顔はとてつもなく嬉しそうだった。 あんな貧乏魔導士に嫁ぐなんて可哀想に… それが周囲の評価だし、私もそう思うが… ゼルゼディス… アイツの考えている事は少し分からない所がある。 結局は全てアイツの思惑通りに行ったのだから… しかし、私の姉に対してのコンプレックスは収まる事は無かった。 婚約者を奪い、貧乏魔導士に嫁に出し、全てを取り上げたのに… それでもなお… あのハニーゴールドの髪と瞳がチラつくのである。 私は心配だから姉に会いに行くと言って、外泊許可をシャンク様に取った。 2日間かかる馬車の道をひたすらに進んだ。 エシャロットは今度こそ、堪えているだろうか? ゼルゼディスは本当に貧乏らしいし、宮廷魔導士の中では下っ端。 給料も僅かな筈だし、領地は荒れ果てていると聞いている。 きっと、苦しい思いをしているに違いない。 そう思って私はほくそ笑んだ。 長い2日間の旅が終わり、私はゼルゼディスの領地へとたどり着いた。 貧乏な農民達が私の王族馬車を珍しそうに覗き込んでいる。 ふっふっふっ…! 何よ、あのカマトト女にぴったりの貧乏臭い場所じゃないの! まぁ、来るまでも無かったけれど、これであのハニーゴールドの悪夢も見ずに済むわ! ふふふ、やっぱり私が勝ち組なのね! そして、オンボロな屋敷に馬車が到着した。
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