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そんな私は、小学生のある日。叔母さんの家に遊びに行ったときにこんなことを尋ねたのだった。
「ねえ、叔母さん。叔母さんは魔女なんでしょ?魔法が使えるんでしょ?」
「ふふふ、さあ、どうかしらー?」
「もう、誤魔化さないでよ!私も魔法が使えるようになりたい!叔母さん、私に魔法を教えてよ!」
今思うと、とんでもない無茶を言ったものである。そして彼女には、“自分は魔女なんかじゃないから魔法は使えない”と、そう逃げを打つことはいくらでもできたはずだった。
しかし、彼女は魔法を完全に否定はしなかった。私が叔母さんの魔法に夢を見ていることを知っていたからだろう。もっと言うと、魔法というものがこの世界にあると信じたい年ごろだったと見抜かれていっと言うべきか。夢を壊さずに私に納得させるというのは、なかなか難しいことであったはずだ。
ゆえに、叔母さんは。
「そうね。じゃあ……夏奈ちゃんに、これをあげるわ」
「え?」
「ちょっと早いけど、誕生日プレゼント」
彼女がくれたのは真っ白な卵だった。正確には、卵型のキーホルダーである。つるっとした卵は表面にラメが入っていて、キラキラと輝いていてとても綺麗だった。
「これ、何の卵なの?」
尋ねる私に、叔母さんはウインクして言ったのである。
「それはね、夏奈ちゃんが幸せを見つけると生まれる卵なの。その卵が産まれるまで、夏奈ちゃんは魔法を使えないわ」
「見つけたら、私も魔女になれるの?」
「いいえ。まず、魔法使いになる準備が整うの。魔法っていうのはね、自分はなく、誰かを幸せにするために使うものなのよ。だから、夏奈ちゃんが幸せを見つけて、誰かを幸せになりたいと願えるようになった時、初めて使えるようになるものなのよ」
「よく、わかんない……」
「ええ。わかるようになるまで、もう少しの辛抱よ」
この時、私は小学二年生。
叔母さんが何を言いたいのか、この時の私にはさっぱりわからなかったのだった。
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