1人が本棚に入れています
本棚に追加
***
それから一年。私は、卵を孵す方法を探し続けていた。しかし、プラスチックでできた卵の中身を、どうすれば生まれるようにできるかさっぱりわからない。とりあえず、卵のチェーンをランドセルにつけて、肌身離さず持ち歩くようにしていた。いつか、この卵が産まれた時、自分も叔母さんのような魔法が使えるようになると信じて。
そして、三年生の春のこと。
「こんにちは。錦戸塁です」
三年生からうちの学校に来た、錦戸塁という名前の男の子。
ハーフだというその男の子は、髪の毛の色が少し明るくて、目が空のように青かった。ふんわりとした優しい笑顔に、私は一瞬で魅了されたのだ。
「好きなものはサッカーと、カードゲームです。よろしくお願いします」
――かっこいい。すごい、かっこいい。
休み時間、少しだけ塁と話をした。
彼はとても聡明で、誰に対しても親切だった。彼が大好きなトレーディングカードゲーム、教えて欲しいと頼んだら笑顔で快諾してくれた。掃除の時間は、みんなが嫌がる雑巾かけを積極的にやってくれた。
私の視線は。その日一日、彼の姿ばかりを追いかけてしまっていたのである。
――お友達に、なりたいな。あの子が好きなゲーム、私も好きになりたいな。……塁君を、笑顔にしたいな。どうすれば、いいのかな。
その日の夜。私はベッドの中で、夢を見ることになる。
虹色のひよこが、あの白い卵の殻を破って生まれてくるという夢だ。ひよこはぴよぴよと鳴きながら私の足元に来て、円くて黒い目でじっと見上げてきたのである。
君はどうしたい?と。まるでそう尋ねるように。
最初のコメントを投稿しよう!