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最初はペンペンされるのが嫌だったけど、これはまだ喋れないあっくんにとっての「ただいま」だってママが教えてくれた。だから私はあっくんがペンペンしにきたらおててを出すようにしてる。そしたら嬉しそうにパチンっと手を叩いてくれるあっくん。ふわふわのおててはとっても柔らかくて、あっくのこのおてては私は嫌いじゃない。
「さようなら」
保育園の先生に皆でバイバイして、自転車に乗る。あっくんは自転車の一番前の椅子。私も乗ってみたいけど、体の大きい私にはもう無理なんだって。
「ねぇママ、お家帰ったらお話があってね」
後ろの椅子に乗せてもらう時に私は急いで言った。早く言いたくて言いたくてたまらなかったから。
「うん、ごめん。ママいっぱい忙しいから今は聞けない。お家のことが終わったら聞いてあげるからね」
ママは答えてくれたけど、私は何も返事できなかった。
だって、ママがそう言った時はそのまま忘れて聞いてくれないもん。お家の中ではいっつも忙しくて、何も終わらないんだもん。
私は、ママに話を聞いてもらうのを諦めた。
「じゃあもう一人でやるね」
「うん、そうして」
ママはなんのことかわかっていなさそうだけど、ホッとしたように笑って自転車を走らせた。
ママ、いいって言った。
じゃあ、私は一人でやる。
お家についてすぐ、ママは「今からご飯を作るから待っててね」と保育園や幼稚園のカバンを玄関にばさばさ置いてキッチンに走っていった。私は「はーい」ってお返事して、あっくんをベビーサークルっていうお家の中に入れて、早速道具を取りに行った。
必要なものはわかってる。
私はまず、色んなものがたくさん入っている引き出しを開けた。高い所にあるけど、あっくんが大好きなガラガラすごい音がする車に乗ったら簡単に届いた。そこにはハンコとかペンとかジュズとかカードとかが入ってる。子どもは開けちゃダメだよって言われてたけど、ママはさっき一人でやっていいって言ったもん。私はそこに、火が出る水鉄砲があるのを知ってる。お誕生日の時にパパが使っているやつだ。
「あった!」
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