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そうしているうちに、パパの笑顔が黒くなっていっていた。
もうパパとわからないぐらいになっちゃって、ウサギの耳もちょっとこげちゃって、ママと私とあっくんだけの写真になる。まるで今のお家みたいに。
「やだ……」
泣きそうになってふとお空を見ると、雲がいっぱいでお日様の光がなくなってきていた。
このままじゃお空を雲が全部覆っちゃって、パパに見えなくなっちゃう。
火をつけても見えなくなっちゃう。
それじゃダメだ。
早く、火をつけなきゃ。
「急がなきゃ……」
私はまたカチッとした。
ボッ、て音がした。
写真に火が付いた。
次の瞬間。
バチン!!
大きな音が鳴った。
頭が痛い。
違う、ほっぺが痛い。
目の前がぐわんって揺れた。
衝撃で水鉄砲が手から離れて足下に落ちた。
「何をしているの!」
ママの大きな声が聞こえた。
ほっぺを抑えながら見上げると、「フー、フー」と肩で息をしながら歯を食いしばってる鬼の顔のママがいた。
「大事な最後の家族写真になんてことしているの!」
「ふ、ぇ……いた、い……」
ほっぺがじんじんする。
ママが火が付いた大事な写真を踏んだ。
火が消えた。
痛くて、悲しくて、私の目に涙がじわりと溜まった。
「火で遊んだら痛いどころじゃすまないのよ!」
ママが怒鳴る。
五月蠅い。
頭が痛い。
耳がワンワンする。
「なんでこんなことを……っ!これ、家族写真なのよ!?最後の、最後の……っそれなのに、なんでこんな大事なもので遊んでたの!?まゆ!あなたって子は、どうしてこう意味が分からないことばかりするの!?普通じゃない子とはわかってるけど、こんなことまでするなんて、もう私、あんたのことがわからない!!なんで、なんでこんなこと……っ」
ママが怒ってる。
すごく怒ってる。
写真を手に取って、顔を真っ赤にしてる。
でも、私だって怒ってる。
「一人でやっていいってママが言ったんだもん!」
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