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――たくさん、泣いた後。
ママが私が持ってきた誕生日用の水鉄砲をカチリと鳴らした。真っ赤な火がボッと出た。ママは私と同じように鼻をすすりながらそれを家族写真に近づけるつけると地面に落とした。黒焦げのパパの近くにいた私やあっくんとママも一緒に黒くなっていく。
「いいの?」
吃驚して私が尋ねると、ママはまた大きく鼻をすすって「うん、いい。迎え火、しましょう」と言って燃えていく写真を見つめていた。
「実際に会えなくても、見えなくても、パパが傍に来て、お話を聞いてくれるかもしれない。今日は、お盆だから」
それに、とママは言葉を続けると、笑った。
「大事な最後の家族写真をなんで燃やすんだって、怒って来てくれるかもしれないから」
怒ったパパは怖い。
だけどその後、いつも優しい。
怒った理由を私がわかりやすいように教えてくれて、私が納得するまで何度もお話してくれる。怒った顔はいつも怖いけど、その後の優しいパパの顔は大好き。
「写真、なくなっちゃっていいの?」
「なくならないよ。ずっとデータが残ってるから、また写真にできるの。パパがいつもパソコンに残してくれるから」
写真はまた宝物にできる。それを聞いてホッとした私は改めて火を見る。写真についた火はもう消えかかっていて、ほとんどが煙だった。その様子を見て急がなきゃという気持ちになった私は大きく息を吸いこんだ。
「パパ!いる!?そこにいるよね!?まゆには見えないけど、聞いて!あのね、まゆね、パパが大好き!」
一度一呼吸置いて、私はもう一度息を吸い込み声を張り上げる。
「でも、もう会えないんだよね!?ギュって、できないんだよね!?なでなでも、できないんだよね!」
目が、熱い。
頬が、冷たい。
あんなに泣いたのにママがまた泣いてる。
ママは、泣き虫になったみたい。
「パパ!写真、燃やしてごめんね!でも、最後の家族写真だから、燃やすのは今日でおしまいするね!写真は、ずっと宝物にするね!」
私はパパがそこにいると信じて、まだ叫ぶ。
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