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面会室
宝物庫からハンマーを持って、そのまま面会室へ向かった。
これで卵の殻を砕けるかもしれない。
見取り図が正しければ、殻の向こう側に面会室があるはずだ。
彼女は嫌そうな表情で、こちらをにらみつけるだけだ。
忠告も聞かず、部屋から道具を持ち出されたのが気に食わないのだろう。
ハンマーで卵を打つと、殻はバラバラと砕けた。
卵の殻は壁を貫通し、面会室に直接つながっている。
面会室にはアクリル板で仕切られたテーブル、その向かい側に白衣を着た中年の男が座っていた。
「部屋をうろつくなと言ったはずだろう。
なぜ、言いつけを守れないんだ?
迎えに来ると約束したじゃないか」
「ごめんなさい、パパ。
何度も言ったんだけど、話を聞いてくれなくて」
彼が実験を主導しているパパらしい。
凶悪な殺人鬼みたいな顔をしていると思っていたから、拍子抜けしてしまった。サラリーマンを絵にしたような男だ。
しかし、険しい表情でじっと見ている。
彼女は目をそらし、黙っていた。
脱出しろと命令したのは彼ではないらしい
「分かっているだろう、ママだって大変なんだ。
どうして、いい子にしていられないんだ」
男はゆらりと立ち上がった。
握っていたはずのハンマーは手元から消え、男の手の中にあった。
「まあ、いいさ。
次はうまくやればいいだけの話だ」
男はハンマーを振り上げた瞬間、俺の意識は吹き飛んだ。
頭に痛みが走り、慌てて起き上がった。
部屋は暗く、自室のベッドにいることに気づいた。
呼吸を何度も繰り返すが、激しい頭痛と心臓の音で落ち着くことができない。
シャツは汗で張り付き、気持ちが悪い。
真夏でもないのに、こんなに汗まみれなのだろう。
結局、あの部屋は何だったのだろう。
卵から産まれ、ママが来る前に部屋から脱出しようと探索した。
卵の殻の向こうにある部屋でパパに頭を殴られた。
とんでもない悪夢だ。
あそこで実験を繰り返しているのも、赤黒いシミのついた道具も、卵を産み続けているママも、すべて夢だったのだろうか。
そうだ、あれらはすべて夢だ。卵から産まれるわけがない。
夢だと思いこみ、再び布団にもぐった。
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