アラフィフ女の最後の願い

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私の名前は由紀。50歳の会社員。 夫と大学生の子供が2人いる普通のおばさんだ。子供達が希望の大学に入り、やっと子育てが終わって母親卒業だ。夫と2人になり仲が悪いわけではないけど、楽しくもない。 今夜は、夫は同僚と飲み会と言っていた。 私は、仕事帰りに一人焼き肉を満喫してふらっと小さなバーに入った。 こういう店は何年ぶりだろう。 ジャズの音色が心地よい。 カクテルを注文すると、あまりの美味しさに2杯3杯と飲み5杯目までは覚えていたけどいつの間にか眠ってしまった。 そっと肩を叩かれ見あげると、知らない男の人が話しかけてきた。 「あなたの願い事は何ですか?3つ叶えることができるとしたら、何を願いますか?」 と、ささやきました。 私は、いつもダイエットに失敗するので、「痩せてスタイルがよくなりたい。」 後、20代に戻ってきれいになりたい。」 「3つ目は、う〜ん一番好きだった人と結婚 したい。」 と、つぶやいていた。 またしばらく眠っていると、「お客様、閉店ですので」と、言われ精算を済ませるとお店を出た。 終電に間に合わずタクシーで帰宅した。 玄関の鍵を開け、中に入るとリビングに飾ってあった子供達の写真がない。 結婚式の写真はあるにはあるが、何か様子が変だ。 隣に写って微笑んでいる人は夫ではなく、大学時代に付き合っていた健二だ。 長身でとても素敵な人。 私の一番好きだった人。 今でも、きっと好きだと思う。 夢にしては写真がリアルで、私がまだ若くてシワが一つもない。 何が起きているのか分からなくなってパニックになった。 きっと疲れているからと思い、お風呂に入って寝ることにした。 お風呂上がりに、髪の毛をかわかして水を一杯飲んだ。 まだ、お酒が残っているのか頭がぼんやりする。 いつぶりだろうと思うくらい、長い時間眠っていたようだ。 「由紀ちゃんおはよう!」 と、懐かしい声がする。 私はまだぼんやりする中、前を見てみると「え〜っえ〜っ.....」 「あなたは誰ですか?」 「由紀ちゃん朝から冗談か〜」 と、大好きだった大学時代の彼が目の前に いた。 「健二君?」 「私..... ずいぶん眠ってしまったみたい。 「ごめんなさい。」 「由紀ちゃん!朝ごはんできてるよ。」 「今日は土曜日で、お休みだから美味し いイタリアンで、ピザでも食べる?」 「うん。」 私は、これが夢なら覚めないでほしいと 思った。 夫は自分に朝食を一度も作ってくれたこと もなければ、子供が生まれて名前で呼ばれた こともない。 とても嬉しかった。 洗面台で顔を洗っていると、若返っている 自分がいた。 それに痩せていた。 やっぱり夢なんだな〜幸せすぎる夢よ 覚め ないでほしい。 バーで会った知らない男の人が願い事を 叶えてくれたのかもしれないと思った。 健二といるだけで、それだけで幸せだった 若返った自分といつも優しい健二と暮ら せて、毎日がとても幸せだった。 それから、半年くらいたった頃健二と結婚 して幸せなはずなのに心の奥がなぜか痛い 理由は分からないけど、心が痛い。 それから数日たった頃、あの日のバーで の出来事を思い出した。 やっぱり何かの間違いで、時間が過去に 戻ったのかもしれないと思った。 急に子供のことを思い出した。 涙が溢れ出し止まらなくなってた。 何日も時間が止まったような感覚だった 「お母さんただいま〜」 長女と次女の声が聞こえてきた。 ここは、夫と子供達と暮らす家だった 夏休みになり、帰省してきたよう。 さっきの心の奥の痛みは、この子達だ ったのかと思った。 大好きな健二は隣にはもういないけど やっぱり私は、母親なんだな〜と思った 不思議な出来事が今でも信じられない けど、心の奥にそっと閉まっておこうと 思う。 今でも大好きな人、どうか幸せでい てね。 由紀の最後の願いは、3つ目の健二との 結婚だったはずなのに、今はただ大好き な人が幸せでいることだけだった。 大好きな人、また会えたら....
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