⑨13番目の呪われ姫は新しい住人を受け入れる。

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「なっ!! 私の貴重なタンパク源がぁぁあー」  伯爵が飛竜を愛でる側で、卵食べるの楽しみにしてたのにっとベロニカは全力で悔しがる。 「それだけ甲斐甲斐しく世話して、本当に食べる事しか考えてなかったのかよ!?」  くすんと泣き真似をするベロニカから護るように伯爵は飛竜を後ろに隠す。 「……伯爵、その子は一体なんですか?」  食べないので見せてくださいと背伸びをするベロニカの前に、 「ぴぃぴ?」  と可愛い鳴き声をあげてひょこっと飛竜が顔を出す。 「んーなんでしょうね? 飛竜っぽいけど、見たことない種類ですね」  伯爵は一通り観察して撫で回した後、 「はい、ご主人様」  とベロニカに差し出す。 「ぴぴっ?」  きょとんと自分を見てくるクルクルとした丸い琥珀色の瞳を金色の大きな目でじぃーっと見る。  その視線が怖かったのか、 「きゅぅう」  小さく鳴いた飛竜は逃げるように羽を羽ばたかせ伯爵の腕に収まった。 「何、おまえこっち来るの? 本当可愛いなぁ」  伯爵に喉を撫でられゴロゴロと懐く飛竜を見て、 「やきとり」  とベロニカはとても低い声でそう言った。 「はっ?」 「名前、やきとりにします」 「いや。いやいやいやいやいや、まだ食べる気ですか!?」 「伯爵、大抵のモノは焼くか煮れば食べられるんですよ?」  何言って、と言いかけて伯爵は言葉を呑む。  ふふっと綺麗に微笑むベロニカの目が怖いくらいマジだったからだ。 「ぴきゅ!?」 「ほらぁ、怯えてるじゃないですか!」  生まれたばかりでも本能的にヤバいと感じるのだろう。飛竜はきゅーと鳴いて伯爵の後ろに隠れた。  そんな飛竜を抱き抱えた伯爵は落ち着かせるようによしよしと頭を撫でる。 「……手羽先とどっちがいいですか?」    伯爵から離れなさい、私だってよしよししてもらえないのにと飛竜相手にベロニカは対抗意識を燃やす。 「いや、そもそもコレ鳥じゃないし」   「ぴきゅきゅー」  伯爵に保護してもらえると察した飛竜は伯爵越しに抗議を述べる。  そんな飛竜の必死な姿はとても可愛いく、スリスリと頬擦りしてくる飛竜に伯爵は優しく笑いかけると、 「……ベロニカ様、俺コレもらっちゃダメですか?」  ベロニカにそう頼む。 「ダメ! ダメですっ!! 元の場所に返して来ます!!」  スマイル有料の伯爵が満面の笑みで愛でている。伯爵が取られるとベロニカは危機意識を持ちつつ間髪を入れず却下する。 「親が面倒見ずに孵った子なんて、放り出した途端に死んでしまいますよ」 「弱肉強食、自然の掟」  絶対反対とベロニカは手でバツを作り拒否。 「そんなよく分からないもの拾ってペットにするおつもりですか!?」  これ以上扶養家族増やしても面倒見切れませんよ、どれくらい大きくなるかわからないしと説得を試みる。 「いいですね、それ。ペット枠空いてますし」  だが、伯爵は飛竜にメロメロで、懐っこいな、とベロニカの話など入らない。 「みやぁぁぁーー! ダメったらダメです」 「何でそんなに嫌なんですか。ベロニカ様すでに人外のアレやコレ外に野放しじゃないですか」 「だ、だって。伯爵そんなの連れて歩いたら目立ちます」 「それは確かに一理ある」  またベルに"お兄様はすぐ何でも拾って来る"と怒られるなと仁王立ちする妹の姿を思い浮かべた伯爵は、 「じゃあ、領地に連れて行きます。今会社落ち着いてるし、会社はヒトに任せてしばらくこの子の世話します」  内緒で飼う方向で行く事にした。
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