1人が本棚に入れています
本棚に追加
「御注文は? あれれれ??」
「へ?!」
ぼくは目を疑った。
お盆片手の浴衣姿の女の子だった。
それで、高校の同級生のぼくの憧れていた人。けど、ちょっと違う。クラス全員の憧れの的でもあった。
髪を右端で軽く結っていて、それ以外は長い髪が自由に腰へと流れている。紫色の浴衣は、金色の金魚の刺繍が所々にしてあった。
だいぶ遅くに来た僕は、カウンター席にも座れずにいた。店の隅で阿波野さんと会話することにした。
「珍しいわね。こんなところであなたと会うなんて」
「え、あー。そうだね」
「久々に会ったとも言うわね」
「あー、確かにね。学校は今は少しお休みなんだよ」
「あ、どうぞ」
「ありがと」
「それね、このお店でちょっと自慢のほうじ茶なのよね」
「ふーん」
「美味しい?」
「まだ飲んでないよ」
二人で他愛ない会話をしていたら、もう閉店時間だった。
無理もない。
客が帰っていき、店員も帰り支度をしている。
しばらくすると、お茶屋には、ぼくと阿波野さん二人っきりになっていた。
「帰ろうか?」
どことなく阿波野さんが言った。
「そうだね」
最初のコメントを投稿しよう!