正しい夜道の歩き方

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「御注文は? あれれれ??」 「へ?!」  ぼくは目を疑った。    お盆片手の浴衣姿の女の子だった。  それで、高校の同級生のぼくの憧れていた人。けど、ちょっと違う。クラス全員の憧れの的でもあった。  髪を右端で軽く結っていて、それ以外は長い髪が自由に腰へと流れている。紫色の浴衣は、金色の金魚の刺繍が所々にしてあった。  だいぶ遅くに来た僕は、カウンター席にも座れずにいた。店の隅で阿波野さんと会話することにした。   「珍しいわね。こんなところであなたと会うなんて」 「え、あー。そうだね」 「久々に会ったとも言うわね」 「あー、確かにね。学校は今は少しお休みなんだよ」 「あ、どうぞ」 「ありがと」  「それね、このお店でちょっと自慢のほうじ茶なのよね」 「ふーん」 「美味しい?」 「まだ飲んでないよ」  二人で他愛ない会話をしていたら、もう閉店時間だった。  無理もない。    客が帰っていき、店員も帰り支度をしている。  しばらくすると、お茶屋には、ぼくと阿波野さん二人っきりになっていた。 「帰ろうか?」  どことなく阿波野さんが言った。 「そうだね」
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