線香花火が消えるまで

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「あ」  それはほぼ同時で、二人の間には再び闇が広がる。 「三本目だな」 「うん」  宏人が線香花火に火をつける。時間が経つのが異様に早く感じて、火がつかなければいいのにと思った。赤い玉の周りに火花が舞う。松の葉みたいな火花がいくつも現れていく。 「……俺さ、朱里に言ってなかったことがあるんだ」 「え、なに?」  突然の告白のような言葉に、わたしの心臓はますます高鳴っていった。 「最初さ、朱里のこと意識し始めたのは席が隣りになったからって言ってただろ?」 「うん」    彼と付き合うことになったのは、高校二年の春。同じクラスで席が隣同士になったことがきっかけだった。  宏人は気さくに話しかけてきてくれて、わたしたちはすぐに仲良くなったのだと思う。いつも話が盛り上がり、どうでもいいようなことで笑い合って、毎日が楽しかった。 「俺と付き合ってほしい」と言われたのは、それからしばらく経ってから。  学校帰りの高架下で告白された。それは本当に突然のことで。電車の音が静かになるタイミングでわたしは返事をしたのだ。「お願いします」と。 「本当はさ、一年のときからずっと気にしてたんだ」 「え」 「なんかさ、そんなこと言うとキモいとかストーカーとか思われるかなと思って言えなかったんだけど」 「そんな、宏人のことキモいなんて思ったこと一度もないよ」  火の玉はいつの間にか小さくなっていて、そのまま消えた。 「……ありがとう。とにかくさ、言えなかったんだよ。学校でたまに見かけたりさ、すれ違うときとか、めっちゃ気にしてた。ははは、いや、やっぱキモいわ俺」  わたしはなにも言わず大きく首を振る。  
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