立たせる男と、折る男

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(爆発音、崩れる建物…戦争の風景) A …おい、無茶すんな! B 許せねぇ…人生を、生活を…踏みにじりやがって…くそっ! A …あっ、危ない。伏せろ。   (爆発音) B …わりぃ。おかげで助かったわ。 A バカか?命がいくつあっても足りないだろ。 B ははっ、ありがとな…ポール。 (ここまで回想) (銃撃の激しい地域に潜伏している兵士のAとB) A はぁ…いつまでこんなことを続けるんだろうな。 B ははっ…全く同感だ。   こんなくだらないことを始めたヤツの気が知れねぇ。 A 一緒に入隊した同期も、もう、みんな空の上だしな。   まだ図太く生きてるのは、俺とおまえだけ。 B あぁ、そうだな。   でも、これが最後の戦いだ。これが終われば… A (Bの言葉にかぶせて)   俺、この戦いが終わったら、結婚するんだ。 B は? A 田舎に婚約者を待たせているんだよ。   まぁ、口は悪いし、美人でもねぇけど、   料理の腕だけは抜群で…ん?なんだ、その顔は?   …羨ましいのか? B …おまえ、バカか?   死亡フラグって言葉知ってるか? A は?死亡?なんだそれ。   縁起でもないこと言うんじゃねーよ。 B …まさかとは思うが、その婚約者は、   おまえの想像上の存在…ってことはないよな? A なんだよそれ。   自分が独り身でさみしいからって、言いがかりつけてくんなよ。   (カッとなって大きな声を出す) B わ、やめろ! (SE 爆音) A おぉぉお、あっぶねー!びっくりしたー!   おい、大丈夫か? B あぁ…無事だ。まったく…おまえのせいだぞ。 A ははは。生きてたんだから、良かったじゃねーか。 B 次やったら承知しないからな。 A …それよりさ…(何か異変に気付き)あれ…? B ん? A 今、何か…あー…いや、なんでもないわ。すまん。 B はぁ!?だめだめだめだめ。何を見た?   ちゃんとはっきりしとかないと!   それ、絶対なんでもなくない!死亡フラグだから! A な、なんだよ。そんなに慌てて。 B 言って?ちゃんと、言葉にして!? A え。 B じゃないと、その正体不明なヤツにうっかりあっさり   やられちゃうフラグなんだってば、それ。 A すまん…ちょっと、おならをスかしただけだよ…。 B え?あ…くっさ!なにこれ、くっさ!! A おなら。 B うっせぇよ。もう、おまえ、余計なこと喋るな。 A でもさ。(もじもじ) B なんだよ、戦闘に集中しろよ。 A やっぱり、こう長く戦争をやってるとさ、   なにが現実だったのか、わからなくなるよな。 B …はぁ? A だって、そうだろ?   毎日生き延びれるか、ここで死ぬのか…そればっかり。   こんな世界が俺の日常になっちまった。 B …そのうち、またあくびが出るような日常が戻ってくるさ。 A そう…だな…そうだといいな…(くねくね) B おい、おまえ、なに、くねくね変な動きをしてるんだ? A 俺は大丈夫だ…先に行け。すぐに追いかける。 B え?どこに?   てか、そのセリフも死亡フラグなんだってば! A だから何でもないって言ってるだろ!   さっきからしつけぇんだよ、その何とかフラグってやつ! B おまえのことが心配なんだよ!   さっきから、節操なしにホイホイ立たせやがって。   ほら正直に言えっ!どうした?どこか苦しいのかっ?   (心配して大きな声を出す) A うるせぇよ!心配してくれなんて、いつ俺が頼んだ?   立つのは(ドカーン)だけで十分だ! B なんだと!?俺がどんな気持ちで…(言ってると思ってんだ) A …あ。なんか光った(スナイパーのスコープの反射の光に気づき) B あ?その手には乗らねぇよ   …って、スナイパーじゃねぇか、危ない、伏せろ!! (銃声、そしてゆっくり倒れていくA) B ポーーーーール!! A ぐわあぁぁ! B おいっ、生きてるか!?返事をしろ! A (苦しそうな呼吸で呻き苦しむ) B こんなところで死ぬんじゃないぞ!   死亡フラグを立てたからって、おまえは死なない…   俺が、いくらでもそんなフラグへし折ってやるからな! A ぐっ…うぅぅ B 胸をやられたのか?まて、今傷口を…(服を脱がす)。   うっ、これは…!! A や…めろ…み…るなぁっ…! B おまえ、戦場にブラジャー着けてきてんだよ! A …べべべべべ別に? B どう見ても、おかしいだろ!   いや、違う。そうじゃなくて。落ち着け、俺。   おまえ今、撃たれただろ、傷口は? A あぁ、それは…このブラのワイヤーが、   敵の弾を止めてくれてたらしい。 B せ…生存フラグ…? A え? B だけど、そういう弾を止める生存フラグって、   普通、恋人の写真が入ったロケットとか、お守りじゃね? A このブラだって、婚約者のブラだ。   お守りがわりに、って持たせてくれたんだ。 B そこは素直にお守りを持たせろや!   んで、おまえも、律儀に着用してんじゃねーよ! A いや、実際、このブラのおかげで命が助かったわけだし。 B そうかもしれねーけど…まぁ、生きてて良かったよ。 A ふはははは。 B しかし、おまえ、爆撃の前になんか様子がおかしかっただろ。   あれ、なんのフラグだったんだ? A あー、先の爆撃の時にブラのホックが外れちゃってさ、   気持ち悪くって、こう…(くねくね)   あ、丁度いいから背中のホック留めてくれ。ほい。 B え…あぁ…んーと…ん?   なぁ…このブラ、婚約者のモノだったわりには、   ずいぶんお前の身体にフィットしてないか? A ぎくっ B …まさかとは思うが、やっぱりその婚約者は、   おまえの想像上の存在…ってことは… A なんだよ。またそれかよ。   自分が独り身でさみしいからって、言いがかりつけてくんな。 B ということは…   婚約者と結婚する死亡フラグは成立してなかったが、   同時に婚約者からのお守り生存フラグも無くなって… A ん? B ってことは、受けた攻撃は、   それぞれのフラグ縛りも無くなり、ただのダメージに… A ぐふああぁぁぁぁあ!(あとからダメージ) B おい、しっかりしろ…これが最後の戦いなんだ。   これが終われば、帰れるんだぞ!   俺たちだけは、生きて帰るって約束したじゃねーかよ!!   俺を置いて死ぬなー!
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