最後の晩餐はカレーうどん

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 手が震える、動作が遅くなる、前かがみになる、歩幅が小さく足が前に出にくくなる……そんな説明にいちいち思い当たる節があった。 「命を取られる病気ではありません。ただ、生活に少し工夫が必要になります。早寝早起きと健康的な食事、それからストレスをためずに好きなことをすることがポイントです。寝不足や過労はいけません。一緒に病気と上手に付き合っていきましょう」  まだあどけなささえ感じさせた若き日の棚原先生は、そういって夫の肩に手をおいた。 「よろしくお願いします」  私たちは、息子の和人よりも若いその先生を信用することに決めた。    それから早いもので十五年がたつ。その間に先生は市民病院をやめて往診専門のクリニックにうつった。そうして、ずっと夫を診てくれている。今では、転勤族でまともに我が家には顔も出さない和人よりも、私たちの生活を知ってくれている。  
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