最後の晩餐はカレーうどん

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 子供たちが家を出てからは、わざわざ老人二人の所帯でつくることも減っていたけれど、娘の美香が孫の啓介を連れて泊りがけで帰ってきたりすると、なんのことはない、私が時間をかけた煮物より、市販のルーでつくるカレーを喜ぶものだから、また食卓に並ぶようになった。  そして、彼らが嵐のように去って行ったあと、残りもののカレーうどんを静けさの漂う食卓で二人向かい合って食べる時間が、寂しくもありほっとする時間でもあった。  私のカレーうどんに対する認識はその程度のもので、あの人がカレーうどんにどんな思いを抱いているのか考えてみたことなどついぞなかった。  
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