最後の晩餐はカレーうどん

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 私たちは本当に人に恵まれている。おかげでどうなることかと思っていた介護生活も悪くないと思えることもある。 「皆さんが支えてくださるからですよ、ねえ?」  あの人は私の大好きな優しい笑顔になる。五十年前、まだ恋人だったころから、何度となく私を助け、励まし、時にはだましてきたこの笑顔……  玄関先まで先生を送っていくと、梅の香りのする肌に柔らかい風が吹いていた。 「いやあ、もうすっかり春の気配ですね」  先生は、また眉を下げて笑うと、自転車に乗って帰っていった。私の思い描いていた老後とはずいぶんと違うけれど、これはこれでまた悪くないと思う。  その夜、美香がよってくれた。 「啓介がバイト先でもらってきたの」  そう言って、このあたりでは有名なお寿司屋さんの鯖寿司を取り出した。大学生になった啓介は、居酒屋でアルバイトをしている。 「ずいぶんいいものもらってくるのね」 「あいつ、モテるのよ。ああ見えて」 「最近の若い子は鯖寿司なんかプレゼントするの?」 「多分、年上のおば様からもらうんでしょ」 「へえ……わからないもんね」 「同年代には受けないみたいで彼女もまだできないみたいだけど」
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