最後の晩餐はカレーうどん

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 孫の話をしながらあの人の好物をほおばる私たちを、あの人はやっぱり笑いながら黙ってみている。 「相変わらずおいしいよ」  美香の言葉にも黙ってうなずく。 「そういえば、カレーうどんが食べたいって」  昨日の今西さんの話を思い出して話していると、あの人はいつのまにか目を閉じていた。眠ったのか、眠ったふりなのか……なんとなく、今西さんとの間に秘密を抱えているようなそのそぶりに、心がざわついた。  美香もそんな私の顔とあの人の顔を見比べながら唇を軽く尖らせた。言いたいことを抱えているときの幼いころからの癖だ。この子は隠し事ができない。 「ふうん……あの人がそんなこと言うなんてなんか意外ね」  こうしてちょこちょこ顔を出す美香はヘルパーさんたちのこともよく知っていて、初めて今西さんに会ったときは『春風を抱いているような人』と詩的なことを言っていた。 「でしょう? 食べられないってわかってるのに、わざわざそんな話するなんて」 「ま、お父さん、人が食べてるの見るの好きだから、食べ物の話も嫌がらないのかもね」  思わず責めるような口ぶりになった私をなだめるように話を切りあげて、美香は帰っていった。  
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