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今西さんが夫の隣へ戻っていきながらそう伝えると、夫がうなり声のような返事をする。
「では、お着替えも終わってからお願いしてみましょう」
しばらくそのまま目をとじていた。開けた窓から入ってくる風はまだうっすらと肌寒い。
「奥さん、終わりました」
今西さんの柔らかい手が肩に触れる。私は今初めて気が付いたふりをして目を開けた。
「あら、もう終わったの」
我ながら芝居がかった動きで目をこすりながら、今西さんの顔を見上げる。
「お疲れですね」
「春眠、暁を覚えずってやつかしら」
「めっきり春めいてきましたものね」
立ち上がる時、思わず腰をおさえた。
「奥さん、実はご相談があるんです」
心の中でさあ来た、と身構えながら、何食わぬ顔を作って見せる。
「あら、なにかありました?」
「実は……」
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