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「ねぇ、よっちゃん。お花見って初めてしたけど気持ちがいいね」
そう感じる要素に僕は入っていないんだろうな。……いかん、客観的を通り越して自虐的になりつつある。いつものペースを取り戻そう。
「当たり前だよ。桜の木から発せられるフィトンチッドにはリラックス効果があるし、さっき教えたクマリンには抗菌作用、鎮静作用のほかに血圧を下げたり、咳を止めたりする作用だってあるんだから」
「本当に? 桜ってすごいんだなぁ」
立ち止まった君が両手を大きく広げて深呼吸する。木漏れ日を受けたきれいな横顔に僕は複雑な溜め息をつくしかない。
こうなると桜に鎮静作用があるのかどうか甚だ疑問だ。だって僕は現にイライラ、モヤモヤのしっぱなしなんだから。
たぶん、この気持ちだけは桜の力をもってしても癒せないだろう。桜が好きなアイツを、君が好きでいる限り。
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