14人が本棚に入れています
本棚に追加
なのに君はSNSで見たことや、誰かから聞いた情報に踊らされて、アイツ好みの女の子になろうと努力してる。
本当はショートヘアや濃くて鮮やかな色が似合うのに、髪を伸ばしてみたり、ぼやけたパステルカラーの服を着てみたり。
中でも一番嫌なのは、アイツが好きな桜の香りのするコロンをつけることだ。傍に寄るとほのかにふわりと香り立ち、僕の胸を締め付ける。
明るくて元気な君には、以前つけていたシトラス系のほうがいいに決まってる。そっちのほうが僕も好きな香りだったのに。
だから僕は、桜が嫌いになった。
今まで好きでも嫌いでもなかったけれど。
今日ここへ来たのだって、アイツが昨日訪れていたことをSNSで知ったからだ。確かに満開の桜はきれいだけれど、今年に限っては早く散ってしまえと思う。アイツの足跡をなぞり、同じ景色を見たがる君。頬を桜色に染め、告白すべきかどうか興奮気味に相談してくる。
だから時々不安になってしまうんだ。
君に僕は見えてるの?
僕は君の何? ただの幼馴染み?
一応男だし、人並みに欲望だってあるんだ。
現実では遠くから見つめるだけで、スマホの画面でしか触れられないアイツより、すぐ手の届く僕をどうして選んでくれないの?
最初のコメントを投稿しよう!