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亜由は親から虐待されてて、家を出て一人で生活するためにキャバ嬢として働いていると聞かされたことがあった。根は悪いヤツじゃない。ただちゃんと誰かに愛されたことのない亜由は、寂しさの紛らわせ方も埋め方も知らないだけ。
──あの頃の俺と同じで。いつだって哀しみに溺れてる。でも俺はもう亜由とは違う。有桜がいるから。有桜を傷つける奴はどんな理由があっても俺は許さない。
「何それ……面白くない。ますます拡散したくなるんだけど?」
「じゃあさ、どうしたらその動画消してくれんの?」
俺は亜由に一歩近づいた。
「勿論、また抱いてくれたらすぐに消したげる」
亜由が肩から俺の頬に触れると、もう片方の掌の中のスマホを俺に向けながら笑った。
「あっそ。じゃあ」
「遥に……触……いで」
「え?有桜?」
見れば目に涙をいっぱい溜めた有桜が亜由に向かって何か言葉を発している。すぐに亜由の顔が醜く歪んだ。
「は?何よ?遥は今アタシと話してんの!子供は引っ込んでなさいよ!」
「遥に……」
有桜が俺から手を離すと、俺の頬に触れている亜由の手首を掴んだ。
「痛っ、ちょっと何なのよ!」
「遥に触んないでっ!」
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