卒業後編Ⅱ

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<楓翔side> 「もういい加減にしてよ。私の目の前に現れないでって言ってるでしょう!」 「どの口が言ってるんだ、どの口が!お前が贅沢できているのは他でもない俺のおかげだってことが分からないのか!?」 「私にだって稼ぎくらいあるわよ!」 「はっ、そのうち一銭たりも手を出さず俺の金ばかり使ってるくせによく言うさ」 俺が小学生の頃の家の中は、ぶっちゃけて言えば最悪な環境だった。 母親は金遣いの荒い人で、夜は毎日どこかに出かけていた。 父親は仕事が忙しいのかあまり家に帰ってこない人で、顔を見た回数なんて二桁もいかないと思う。 もしかしたら片手でも収まるんじゃないか……?ってぐらい。 そのせいか親同士のすれ違いが激しくて、顔を合わせれば二人は必ず喧嘩していた。 怒号が飛び交うそんな中、俺はただ一人、部屋の中でじっと静かになるのを待ってたんだ。 (あぁ、またか……。早く終わってくれないかな) 両親が喧嘩を始めると、少なくとも一時間は終わらない。 まだ幼いながら、もっと小さい声で喧嘩してくれたらいいのに、なんて思っていた気もする。 俺だって、あの馬鹿げた口論を聞きたくて聞いていたわけじゃない。 出来ることなら聞きたくなかったけど、でも子供の俺には何の力もなかったんだよな。 親の喧嘩を止めようとも、そこから逃げようとも思わなかった。 ただ時間が過ぎるのを待つことしかできなかったんだ。 「うるさいなぁ……」 両親が顔を合わせるのは、大抵が夜中。 特に日付が変わってから。 父親は家に帰ってきたとしても夜遅い時間だし、母親も夜遊びが趣味なのだから当然夜遅くまで起きている。 昼間に顔を合わせることがない親にとって、喧嘩する時間=夜中なのは当たり前の事だったってわけ。 でも、そんな日々は子供の俺には辛くて。 せっかく寝てたのに親の罵声で間接的に叩き起こされて、聞きたくもない会話が聞こえてくるのを必死に耐えて。 そんな環境にいたら、だんだんストレスも溜まっていって、夜眠れなくなったり、ご飯が食べられなくなったり。 まぁ飯作ってくれる親じゃなかったけど。 学校から帰ってきたら机の上に千冊が一枚置いてあるだけ。 それで晩飯買えって意味な。 そんな小学生時代を過ごしていたものだったから、学校にすら行きたくなくなっていったんだよな。 もうすべてに対して無気力と言うか。
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