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<楓翔side>
そんな、鬱々とした気分のまま参加した入学式。
その後のクラス発表と、初めてのホームルーム。
例のごとく名簿順で座らされていた俺は誰と話す気にもなれなくて、机に伏せて眠っていた。
「お前、大丈夫か?」
そんな時だったんだ。
壮斗が声をかけてくれたのは。
最初こそ無視しようって思ってたんだけど、壮斗の声からは他意は感じられなくて、こいつ本気で俺のこと心配してくれてんだなって、何となく直感でそう思った。
渋々顔を上げて壮斗のことを見ると、壮斗はすっげぇさわやかな笑顔を浮かべて。
「なんだ、顔色はいいじゃん」ってそう言った。
「眠いだけだから。心配どうも」
「そんな他人みたいな態度取んなよ。これから一年間クラスメイトなんだしさ」
「はぁ……」
「俺、柳瀬壮斗っていうの。お前は?」
「……神崎楓翔」
「楓翔かぁ。よろしくな」
最初の印象は、軽そうなヤツ。
あとは友達めっちゃいそう。
絶対陽キャだこいつ。
それぐらいだった。
壮斗は最初から馴れ馴れしかったし、初対面から俺の名前呼び捨てだったし、なんか距離感近いなって思った。
それがちょっと苦手だったけど、でもそれも最初だけだった。
(いいヤツ、ではあるんだよな……)
壮斗と一緒にいるにつれて、俺も壮斗のことを少しずつ理解することが出来て。
壮斗は、距離感近いし言い方軽いし、俺の想像通り友達もいっぱいいるし誰とでも仲良くなれます、ってタイプだった。
でも、人の深いところにまでは踏み込んでこない。
ちゃんと一線を引いていることに気が付いてくれる。
それが分かったとしても、それがその人なんだって受け止めて、仲良くし続けてくれる。
つまり、俺からしてみれば信じられないくらい壮斗は心が広くていいヤツだった。
そんな距離感が俺にも心地よくて、一年の夏休み前には俺と壮斗はめちゃくちゃ仲良くなれることが出来たんだ。
これが、俺と壮斗が仲良くなったきっかけのお話。
俺が言うのもなんだけどさ、壮斗のこと、めっちゃいいヤツだって思うだろ?
俺も今でもそう思ってる。
俺のこと絶対に見放さないし、マジで最高の友達だよ、アイツは。
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