卒業後編Ⅱ

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<楓翔side> 壮斗と仲良くなってからは、壮斗繋がりで俺にも友達が増え始めて。 サボり癖は抜けなかったけど、中学生の時と比べたら学校には行っていた方だと思う。 友達と遊びに行くことも増えたし、俺は完全ボッチではなくなっていた。 「なぁ楓翔、今日放課後カラオケ行こうぜ」 「いいけど……お前部活は?」 「なんと今日は休みだ!だからいっぱい遊ぶぜ!」 「そっか。いつもの駅前のとこ?」 「そうそう。他のヤツも誘っていいか?嫌なら少人数にするけど……」 「いや、別にいいよ。どうせいつものメンバーだろ?」 もし中学生の俺がこんな会話をしている俺を見たら、ビックリしすぎて失神するだろうな。 そう思えるくらい、俺の環境は壮斗のおかげで随分と変わった。 もちろんいい方に。 学校に行けば壮斗がいる。 放課後友達と遊んでいたら、家に帰らなくて済む。 そう考えたらちょっと気が楽になって、根本的な問題は解決してないんだけど、俺は心なしか気力が回復したような気がした。 勉強は嫌いだったけど、友達と話している間は楽しかったし、嫌なことを忘れることができた。 (家、帰りたくねーな……) でも、俺の家はあそこなわけで。 毎日、最終的には帰らなければいけないわけで。 さすがに高校生でホテル泊まり続けたらいつか補導されかねないしな。 壮斗たちにも心配かけちまう。 今の楽しい環境を壊したいなんて、そんなこと微塵も思うわけがなくて、補導されない程度の時間に渋々家に帰っていた。 母親がいないことが分かれば心底安堵しながら、母親がいることが分かれば心底吐き気を覚えながら。 そして飯は毎日コンビニ飯。 そんな生活なもんだから、冷蔵庫もほぼ空っぽ。 水と、俺が毎日なめてる飴が入っているだけ。 掃除と洗濯は、何とかやる気を振り絞って週一で俺がやる。 結局家の環境は変わらないままの生活が、高校生になっても続いていた。
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