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<楓翔side>
「なぁせんせー、ちゅーしていい?」
「……好きな時にするんじゃないんですか?」
「へぇ、そんなこと言っちゃうんだ。じゃあもう遠慮しないから」
フローリングの上だとか、ムードもクソもないとか、そんなこと気にせずに俺はせんせーの唇にかみついた。
準備室でキスしたときも思ったけど、やっぱり両想いでするキスってめちゃくちゃ気持ちいい。
一方通行だとどうしても虚しさが残るって言うか、思いが伝わってないって気がするって言うか。
せんせーと初めてセックスした時のキスは、あの時の柔らかくて気持ちかったんだけど、どこか物足りなさを感じたって言うか。
でも、今はそんなのじゃない。
俺はせんせーのことが好きで、せんせーも俺のことが好きで。
せんせーの唇に触れる感覚を覚える度に、好きって気持ちが溢れてくる。
「せんせ、舌出して」
「へ……?」
「えっちなのしたいから。出して」
「……は、ぃ…」
歯列を舐めて、唇に吸いついて、舌を絡めて。
時折せんせーが苦しそうな声を出してるのは分かってるけど、でも止められない。
心の中が満たされていく感覚が幸せで、せんせーの唇が柔らかくて気持ちよくて、せんせーの頭を支えている手につい力が入ってしまう。
欲望のままに、というかもう本能のままに、自分のしたいようにせんせーにキスし続けた。
「んっ……ん、神崎くん……」
「せんせー……」
せんせーにキスする度にせんせーの頬が赤くなっていって、それでも必死に俺に応えようとしてくれるのが分かって、それがとてつもなく嬉しい。
それに、せんせーが俺の名前を呼んでくれるのだってめちゃくちゃ嬉しい……んだけど。
「やだ」
「はい……?」
「もう俺とせんせーは生徒と先生じゃないでしょ。神崎くんはやだ」
せっかく受験頑張って、卒業するまで我慢して、俺のことも頑張って喋って、ようやくせんせーに俺の全部を知ってもらって、俺の全部を受け入れてもらえたのに。
何が言いたいって、今までの俺とせんせーの関係とは、
少し違うものになったはずなのに。
せんせーに俺のことを”神崎くん”って呼ばれると、せんせーの中では、まだ俺は一生徒でしかないんじゃないかって思えてならないから。
俺とせんせーは、もう一歩次の関係になれたんだって、色んなことで実感したい。
「えっと……」
「…………」
「えと、じゃあ……楓翔、くん……?」
「……!じゃあ俺もこれから真弥さんって呼ぼ」
名前呼びになれてなくて照れて赤くなってる真弥さんの頬に軽く触れてから、俺はもう一回真弥さんにキスした。
どれだけキスしても怒られないのが嬉しい。
どれだけ俺が好きだって気持ちを伝えてもとことん受け止めてくれるのが嬉しい。
ちょっと俺が乱暴なことしたって許してくれるのが嬉しい。
真弥さんだって俺のことを受け入れようとしてくれてるんだなって分かるし、そんな関係になれたことが何より実感できる。
俺……受験頑張って良かった……!!
頑張って俺のこと全部喋って良かった……!!
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