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<楓翔side>
「…………」
「……おはよ。学校で挨拶しろってうるさかったのは真弥さんだろ」
「そう、ですね。おはようございます。……じゃなくて!何ですかこれ」
「何って朝飯だけど」
「楓翔くんそんなキャラじゃないでしょう!いつも朝からベッドでダラダラしてるでしょう!」
「その言い草は酷くねぇ!?昨日、無理させたかなって思って作ったのに……」
「うっ……」
なんか若干疲れが残っているような気がしつつも、でもなぜか心はすっきりとした状態で目が覚めた。
真弥さんは俺の隣で寝ていて、真弥さんがそばにいてくれたことに安堵しつつも、俺は時計を見てびっくりした。
だってもう昼前だったんだもん。
確かに昨日はがっつきすぎたし、ヤり始めてからは時計なんて見てなかったし、昨日何時に寝たかすら記憶にないんだけど。
こんなに寝てるとは思ってなくて、とりあえずベッドから出てシャツだけ羽織ってキッチンを漁ってみた。
もう分かってると思うけど、俺の家にはご飯らしいご飯がほとんどない。
つまり、冷蔵庫も棚もすっからかんなわけで。
「財布と……あとは袋か?」
朝から……いや、昼から…? 菓子食べるわけにもいかないしって思って、今度こそちゃんと着替えて近くのスーパーまで走った。
そこからは、もう適当にしかやってない。
目につく安い野菜をカゴに投げ入れて、食パンと卵と、とにかく朝ごはんに使えそうなものを投げ入れて。
家に帰ってきてからも、また適当に朝食っぽいものを作って。
結局作れたのは、適当に切った野菜で作ったコンソメスープと、ベーコンエッグだけだったけど。
まぁまだマシなんじゃね?とは思ってる。
「なんだか色々すみません……」
「いや、それは……俺もごめん。止まんなかった」
「……っ」
リビングの入り口の前で、寝起きの真弥さんが突っ立ったまま真っ赤になってる。
昨日のこと思い出しちゃったんだろうなー。
可愛い。
「それ、口に出したら叩きますからね」
「だから人の心読まないで……」
それにしても、昨日の真弥さんは最高に可愛かったし、最高に気持ちよかった。
一生頭に刻みつけておこう。
「真弥さんお腹空いてる?食べれそう?」
「あ、はい。いただきます」
もっと可愛い顔見てたかったけど、これ以上からかったら口すらきいてもらえなくなるって思ってやめておいた。
向かい合わせでテーブルに座って、二人で合掌する。
前に朝飯食べた時はベッドで横並びだったから、こうやって向き合って食べるの新鮮だ。
学校で食べてる時も向かい合わせだったけど、なんか気分が違う。
俺の家で、俺の作ったご飯を真弥さんが食べてるってだけで、なんか幸せだ。
「相変わらず凄いですね……」
「パンも焼いただけだし、スープも鍋に突っ込んだだけだけど」
「それでもこんなに上手に作れるの、やっぱり凄いことですよ。楓翔くん料理の才能ありそうですね」
「そ、かな……」
飯の時間は、正直好きじゃなかった。
音一つしない空間で一人で食べてても、美味しいとも感じなかったし、楽しくもなかったから。
これも俺が飯食べなくなった理由の一つなのかもしれないけど。
とにかく、家でも学校でも食事に対していいイメージは持っていなかった。
でも、真弥さんと昼飯を食べるようになって、そこからちょっとずつ飯の時間が嫌じゃなくなって。
壮斗たちと出かける時も、回数重ねるたびに飯食いに行くことに感じてた嫌悪感がなくなっていって。
最近は腹が空いたことを自覚したら食べるようにはしてる。
それにこうやって純粋に褒められたら、まぁたまには作ってもいいかな、なんて思うよな。
「気が向いたらまた作ってあげる」
「楽しみにしてますね」
ちなみに、俺が朝からベッドでダラダラしてるタイプだと言った真弥さんの言葉には、どこにも間違いがない。
学校なんて行かずに一日中ベッドでダラダラしてたいって、絶対みんな思ってるよな。
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