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<真弥side>
スマホの画面が指示する通りに電車に乗って、地図の示す通りに足を動かすと、一軒の家にたどり着くことが出来ました。
ここ、で……合ってますよね……?
迷ってはいないはずなんですけど、目の前の光景があまりにも信じられなくて、思わず迷ったのではないかと心配になってしまいます。
私の目の前にあるのは、とても大きな家。
まるでお城みたい、なんて子供っぽいことすら脳内に浮かんでしまうぐらいに。
家先の表札を確認してみると、そこには「神崎」の二文字が。
「やっぱりここで間違いないんですね……」
こんな豪邸にお邪魔するとは微塵も想像しておらず、家を出るとき以上の緊張を覚えながらも、私はインターホンを押しました。
これで同じ苗字の人違いとかだったらとんだ恥晒しですよ……。
『あ、せんせー来たんだ』
「あ、良かったです」
『それ俺のセリフじゃね……?まぁいいや。ちょっと待ってて』
ちゃんと神崎くんが応答してくれたことに思わず安堵しつつ、私は「はい」とインターホン越しに返事を返しました。
思わず「良かった」と、心の内が零れてしまいましたけど。
あれでもし本当に人違いだったら、もうしばらくは外出できそうにありません。
どんな顔して外を歩けばいいのやら。
神崎くんのことを待っている間、何となく手持無沙汰で私は彼の家の外装を見てみました。
……それにしても大きいですね。
ここに神崎くんのご両親と、例えばご兄弟などが一緒に住んでいたとしても、部屋が有り余るんじゃないかってぐらい本当に大きいです。
それに、全体的に白基調なのにどこにも汚れが付いていません。
お手伝いさんがお掃除頑張っていらっしゃるんですかね。
「神崎くんが出てくるのも時間がかかっているようですしね……」
極めつけは、インターホンを介しての受け答えが終わってから神崎くんがここまで来るのに結構な時間を要しているところ。
生涯アパート住まいな私からすれば、信じられない現状です。
私が借りているアパートの場合、例え一番奥の寝室にいたとしても、インターホンの音とか、もっと言えば誰かが廊下を歩いている音すら容易に聞こえるというのに。
「せんせー、お待たせ」
「とんでもないです。ご足労お掛けしました」
「いや、だからそれ俺のセリフじゃね……?」
「私は電車に揺られただけですから」
「それなら俺も家から出てきただけだから」
神崎くんの声が聞こえなくなってから数分後、門の向こう側に姿を現した彼は、閉まっていた門を開けて中へと通してくれました。
ほら、想像していた通りですよ。
門から玄関までに結構な距離があって、そこまでの道もちゃんとタイルで舗装されていて。
いかにもな豪邸の典型的イメージそのままです。
神崎くん、こんな立派なお家に住んでいたんですね……。
「どーぞ」
「お邪魔します」
玄関を開けてもらって家にお邪魔させて頂くと、広い応接間が私のことを迎えてくれました。
二階から応接間までは吹き抜けになっていて、窓から差し込む日差しのおかげでとても明るいです。
わざわざ用意して下さっていたスリッパに履き終えると、神崎くんは先に階段の踊り場まで向かっていて、そこから私のことを見降ろしていました。
やっぱりこの家の住人なんですね。
あまりの大きさに圧倒されている私とは違って、堂々と立っている神崎くんの姿を見ると、妙に納得する部分があります。
当然なんですけど、怖気づいていないというか、いっそこの家の家主のように見えるというか……。
「俺の部屋でもいい?嫌ならリビングとか他の部屋もあるけど」
「一番落ち着けそうなので神崎くんのお部屋で……」
「どゆこと……?まぁせんせーがそれでいいならいいけど」
そりゃそうですよね。
神崎くんにとってはここが住み慣れた家。
落ち着かない場所なんてあるはずないですよね。
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