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「あ、美味しいです」
「ほんと?なら良かった」
「この茶葉も高いんでしょうね」
「そんなことないと思うけど。近くのスーパーとかで買ってきたんじゃね?」
「神崎くんからスーパーって単語が出てくるとは思いませんでしたよ」
なんでだよって言い返したかったけど、よくよく考えればせんせーの考えも分からなくもなかったからやめた。
ずっと学校でご飯食べてなかったの俺だし。
この家も生活感まったくないし。
俺自身も買い物とかほとんど行かねーしな。
行ってもコンビニばっかだし。
そんなこと考えながら俺もお茶を一口飲んでみると、久しぶり、というかほぼ初めて淹れた割には美味しい。
やっぱりこの葉っぱが、スーパーで買ったんじゃなくてもっと高い葉っぱなのかもしれない。
葉っぱ自体のポテンシャル高かったら、それなりに美味く淹れれそうなもんだよな、お茶って。
「あ、このお菓子美味しいですね。どこのか分かりますか?」
「どこだったかな……気に入ったなら持って帰っていいよ。まだ下にあったし」
「…………」
「……せんせー?」
「頂きます」
「ははっ、葛藤してたんだ」
急に俯いて黙り込みだすから何かと思ったら。
気分悪くしたとかじゃなくて良かった。
生徒から物をもらうのはどうなのか、とか考えてたんだろうけど、それがまたせんせーらしい。
ちょっと口角あげながらお菓子食べてるせんせーが可愛いなとか、このままずっと見てたいなとか思いつつ、でもそんなことをしてる場合じゃない。
今日せんせーに家に来てもらったのは、ちゃんと俺のことを話すためなんだから。
「あのさ、せんせー」
「……はい、なんでしょう」
「今日さ、話聞いて欲しくて…せんせーのこと呼んだんだけど」
「はい」
「俺の話……聞いてくれる?ちょっと長くなるかもだけど」
「何となくそんな気はしていましたよ。最後まで聞かせてください」
お菓子を食べていた手を止めて、せんせーは真っ直ぐ俺のことを見てくれた。
どこまでも親身になってくれるあたり、やっぱりせんせーだよな。
こんなに俺のこと真剣に考えてくれる人、初めて出会ったんだ。
だからこそ、せんせーには全部話したい。
こんなこと話したら面倒くさいヤツだって思われるかもしれないけど。
いっそ嫌われちゃうかもしれないけど。
それでも後悔しない。
これは、今までフラフラ適当に生きてきた俺の、けじめみたいなものだから。
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