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 事務所の中央には卓球台ほどの大きさのテーブルがある。  そのテーブルの上に潟津市全図の地図が広げられ、緊急招集された管理官たちが地図を取り囲み、それぞれの地区の責任者たちはしきりなしに鳴る苦情の電話の対応に追われた。 「おい、筧と佐藤玲奈ちゃん」 慌ただしい雰囲気になかで、ひときわ低くて太い声が響いた。白髪が目立ち始めた髪を短く刈り、古希を過ぎても精力的に活動を続けている沖田寛治だ。 水路監視所の総括責任者でもあった。「君たちはこれから六目と七目へ行くんだよな?」 「ええ、そうですよ」  筧が答えると 「そのあとすぐに東町へ回ってくれ。バス通りが冠水してるそうだ。水路に何かが詰まって、それで溢れているのかもしれん。もしあったら取り除いてくれ。きっちり準備していけよ。人が足りなくても応援は呼ぶな。こっちも電話とほかの地区の対応でいっぱいになってるから」  沖田は室内の混乱ぶりを見回した。 「わかりました」筧も納得せざるえなかった。佐藤玲奈に声をかけた。「よし、行くぞ」  二人は駐車場に並んだ黄色い専用車両に乗り込んだ。筧はエンジンをかけながら緊急走行用のサイレンを鳴らす。    
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