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だが、無理なものは無理らしい。帰る頃には体力ごと持っていかれており、キッチンに立つ力さえ残されてはいなかった。無理やり元気を込めた挨拶から、あっさり不調を見破られるほどには。
「うん、じゃあママちょっと寝させてもらうから、今日のご飯レンチンさんか茹で茹でさんしてくれる……?」
「いいよ。ママ大丈夫……?」
「大丈夫、大丈夫ー」
キッチンにて錠剤を飲み干す動作に、和佐の心配の目が刺さってくる。結局、途中リタイアも困ると判断し、夕食は自力で用意してもらうこととなった。
因みにレンチンさんが冷凍食品で、茹で茹でさんがレトルトパウチ食品を指す。
レンジの扱いも火の扱いも、日頃の手伝いの中で確りと教えてある。和佐は教えを忠実に守れる子だ。だから安心して任せられる。
娘よ、君は我が子ながら素晴らしい子だ。母は誇らしいぞ。
和佐は、去り行く私を顧みながら冷凍庫を開け――キッチンを出る頃にはターゲットを定めていた。
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