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わるいゆめのなか
「ねぇママ、なんでうちにはパパがいないの?」
突然の問いに、意識が覚醒する。眩しさに反応し見渡すと、なぜか大きなオムレツの上にいた。
ふわふわの足場に、ついよろけそうになる。黄色い世界には、私と和佐だけがいた。
この問いは、いつぶりだろうか。随分昔に聞いた気もするけれど、その時の私はどう答えたっけ。思い出せず、焦りに背中を押されそうになる。
「ママはなんでもっといっしょにいてくれないの?」
そんな中、次なるロケットが発射された。向かいの大きな瞳から、涙も落下を開始する。次々と落ちる雫は、ふわふわオムレツが吸い込んだ。
目の前の感情に共鳴しかけて、更なる問いに刺される。
「ママは和佐のことすきじゃないの……?」
「す、好きだよ! 好き! 大好き!」
今度こそ迷いなく答えたが、オムレツが水分の吸収をやめることはなかった。
水を吸いすぎたのか、不意に足元が歪む。砂時計のように全身が吸われ、すぐに和佐の顔より低く沈んでしまった。
「和佐はさみしくするママなんてだいっきらい!」
最後には、そんな言葉まで落ちてくる。それは、ケチャップのような粘度で私に絡みついた。
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