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オムレツはあいのあじ
「和佐どうしたの!? なんかあった!?」
勢い任せにリビングへ突入する。調理台の前、和佐は泣いていた。ステップ台に立ち尽くしたまま鼻を啜り、小さくしゃくりあげている。
悲嘆の先にはスクランブルエッグ――じゃないなこれは。オムレツがあった。
すぐに状況を察する。皿には、小玉状の姿で集う茶色気味の玉子たち。そして、フライパンには焦げついてカリカリになった残骸。
ただ、皿の玉子は一つに纏められた形跡があり、オムレツらしき形状をしている。しかもケチャップまでかかっているときた。となると、これはきっと。
「もしかして、オムレツ作ろうとしたの?」
「うん……」
確かに昨日、オムレツが食べたいと言っていた。しかし挑戦をするほどだったとは。
作り方を教えておいてあげれば良かった。なんて赤い目に申し訳なく思う。
「そっかー、頑張ったねー!」
髮を巻き込んで豪快に撫で回す。落胆を解そうとしたが、なぜか涙の度合いを強くしてしまった。
「……うん、おいしいのつくれたらママげんきになるかなっておもったの。でもママみたいにつくれなかった……」
「えっ、私に作ってくれたの?」
悲しみの真相に、じんと胸が熱くなる。悪夢に身を置いていたせいもあるかもしれない。思わず力一杯抱き締めて、ありがとうと叫んでいた。
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