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「これ、食べていい?」
少しして、自然とハグがほどける。頷いた和佐は、気恥ずかしそうに台からジャンプした。
持ってきてくれたスプーンを受け取り、オムレツへ近付ける。見守る瞳が緊張を語っており、私の中ダイナミック演技モードが装備された。
ぱくり――口に含んだ玉子は、火が通りすぎていて固いしちょっぴり香ばしい。
しかし、その締まった食感と風味に絡まる、ケチャップの甘味が何とも心地よかった。消耗した体にも、優しく染み込んでくれる。
「美味しー! 美味しいよ和佐!」
「本当?」
「うん、ありがとねー! 和佐大好き!」
「和佐も好き!」
ここまで来てやっと、和佐に綿のような笑みが宿った。満足げな顔で、二口めを口にする私を見ている。
――ああ、私この子にちゃんと愛されてるなぁ。
もしかしたら十分ではないかもしれないけど、今はこのままでいいか。
私が今あげられるだけの愛を、精一杯あげて和佐を可愛がり続けよう。そうしよう。
ほっこり優しい気持ちまでくれる、こんなに美味しいオムレツは初めてだった。
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