止まらぬ嫉妬の始まり

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マンションの側にある川沿いのフェンスにもたれ掛かり、夕陽に染まったオレンジ色の水面を眺める。 普段は汚ねぇ川だけど、綺麗だな、そんな事を思いながら見ているとメールが届いた。 『仕事に行く』 ベソ掻きそうな顔してたけど、仕事となると柊木は大丈夫だろう、そう思ってメールは無視した。 『仕事に行くが』 『仕事に出ようと思うが』 『もう出ようとしているが』 何件もメールが届いて鬱陶しい。 『早く行け!』 そう一文送ると 『では行ってくる』 と返ってきた。 こんなに柊木の愛を感じるのに、何で余裕でいられないのか、柊木はオレをこんなにも愛しているだろう、誰が現れようが何でもないだろう、そう思うのに腹を立てる自分が嫌だった。 あどけないあの笑顔が、オレ以外を見ていた事を思い出す。 … いや、待て。 アイツから貰ったって事は、会ったってことだよな。 そういや最近、休みの日に一人で出掛けてた事があったな。オレが絵を描くのに集中出来るようにしてくれていたのかと思っていたが、アイツと会ってたのか? 何も聞いてねぇーしっ! 沸々と怒りが湧いてきた。 『今から店を出る』 柊木は帰る時にはいつもメールを送ってくる。 夜中で道路は空いているから着く時間は大抵同じで、到着する頃にいつも玄関で迎えてやっている。 でもこの日、オレはソファーに座り腕を組み一点を睨んで柊木の帰りを待っていた。 オレには言わずに、幼馴染の、キラキラの笑顔を見せたあの男に会っていた柊木、オレはもう怒り爆発寸前。 「ただいまっ!」 仕事に行く前のすったもんだを忘れているかの様に、はしゃいだ声で帰ってきやがった。 『早く行け!』とメールの返信をした事でオレの機嫌が直ったと思いやがったな。 「津々理っ!トイレか!?」 トイレのドアを開けている。 オレが入ってると思うならドア開けてんじゃねーよ。そういうのは大概、開けた方がビックリするもんだ、気をつけろ。そんな事を思いながらリビングで待つ。 「なんだ!津々理、ここにいたのか!」 はしゃいだ声はオレの顔を見て途端にしょぼくれた。 「… なんか… 怒っているのか?」 分かっているんだろうけど、俯いて上目遣いで訊く柊木。 「オマエ、ユウトとかってヤツと会った事、オレに隠してんのか?」 柊木は黙って何も言わずに佇んでいる。 「はぁ〜ん、言えねぇこと、してたんか」 オレは柊木から視線を逸らさずジッと見つめる。 ソファーで腕を組んだままのオレはローテーブルに足を乗せて、何とも行儀が悪いが仕方ない、腹が立ってるから大目に見ろ。 「言えないことなどしていないっ!」 柊木が大きな声でムキになって言い返してきた。 「会った事は認めるんだな」 「………… 」 何で黙ってんだよ、何か言えよ。
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