止まらぬ嫉妬の始まり

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ユウトが店に来たと言った。 スマホのケースは誕生日のプレゼントで貰ったと話す。スマホのケースならボールペンみたいに、そこらへんに忘れる事もなくていいな、そんな嫌味な事を腹ん中で思いながら全くもって面白くない。 幼馴染、柊木の誕生日を覚えてたんだな。 いちいちそんな事を思って不愉快。 こうなったらちゃんと話しを聞いた方がいいと思う、柊木にソファーに座る様に言い、オレはテーブルから足を下ろした。 「座れよ」 「嫌だ」 はぁ? オマエに今、拒否する権限なんてねーわ!言う事聞いて座れや!腸が煮えくりかえる。 「おかえりのキスをしてくれていない」 「…… 」 マジか、コイツ。こんな時によく言えたな、感心するわ。 「バカか」 吐き捨てるようにオレが言うと、 「バカじゃないっ!それにヤツとかアイツとかソイツとかそんな言い方するな!ユウトはユウトだ!名前がある!」 柊木がいきなり怒鳴り始めて、ユウトの事を庇った。 え?とオレは想定外の態度を取られて暫し固まる。 ジッとオレを見ると、柊木はうっすらと涙を浮かべて唇を噛んでいる。 何だよ、オマエ… 何とも言えないモヤモヤとザワザワとした感覚が下腹から上がってきた。 帰宅したまま着替えていない煌びやかなスーツが、今の柊木の顔に不釣り合いで、そんな時はいつもオレがそうさせている事に気付いて、自分への嫌悪感に苛まれる。 「ユウトは二つ歳上で、いつも俺を守ってくれていた。俺はユウトが好きだった!ユウトは俺の初恋なんだ!」 涙をぼろぼろと溢しながら柊木が言った。オレはハンマーで頭を殴られたような感覚がして、何が起きているのか状況が掴めない。 「そうか分かった。話してくれてありがとな」 声は震えていたかも知れない。 柊木の過去をとやかく言うなど以ての外だと思ったし、過去に嫉妬しても仕方がない、頭では分かってるが心が付いていかない。あの時に見た楽しそうな二人の顔が脳裏に焼き付いて離れない。オレの知らない所で、またあの笑顔で会っていたのかと思うと尋常ではいられない感覚に包まれた。このまま此処にいたら、もっと柊木を責めてしまうし嫌味も言っちまうだろう、そう思って部屋に戻ろうと横を通り過ぎた時、柊木の呼吸が荒いのが分かった。ふーふーと落ち着かせるように大きく息をしている。 「どうして分かってくれないんだ!俺は津々理の事がこんなに好きなのに!愛しているのに!」 分かってるよ、とオレは思った。 柊木の愛は痛い程伝わっているのに何でだろうな、オレが聞きてーわ。
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