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だから誰だよ
久し振りだな、元気そうだな、何年振りだ?
柊木と突然現れた知らない男との二人の会話を、耳をそば立てて聞き入る。
「ユウトも元気そうで何よりだっ!」
誰だよ。
柊木の顔がキラッキラして、何ならほんのり頬が赤らんでんじゃねぇか。
何も気にしていない風に服を選びながらも、全神経は柊木とユウトとやらに行っている。
誰だよ。
あまりに話しが弾んでいるような二人に業を煮やす。
「柊木っ 」
我慢できずに声を掛けた。
「津々理っ!ユウトだっ!」
だから誰だよ。
「津々理!幼馴染のユウトだっ!」
知らねーよ、誰だよ。嫉妬心いっぱいのオレ。
「ユウト、俺の… 」
何て言うのか、黙って待った。
「俺と一緒に暮らしている、津々理だ」
一緒に暮らしてる?
ふぅぅん、間違いねぇけどな… でも面白くねぇな。
凄い目でヤツを睨んだのかも知れない、ユウトとやらは怯えた感じでオレを見て会釈をしたから、オレも軽く頭を下げて
「あっちの店、見てるから」
と、ぶっきらぼうに柊木に言って傍を離れた。
ユウト、とかいうヤツは見るからに優しく温厚そうで、オレとは真逆じゃねーかと思うと何だか面白くない。似てたら似てたで、それはそれできっと面白くないんだろうけどな。
柊木はオレの空気を察して、早々にユウトとやらと別れてオレの傍に走り寄ってくる。それでもまた、それはそれで苛立つオレ。
「幼馴染とやらと懐かしい話は終わったのかよ」
完全に不機嫌オーラ全開で柊木に訊いた。自分でも嫌なヤツだと思った。
「… ユウトは同じ施設で育って… 兄弟みたいにいつも一緒にいて… 久し振りだったから… あの… すまない… 」
柊木は幼い頃に両親を亡くして、長男と次男は引き取ってくれる親戚がいた中、三男の柊木だけが一人施設に預けられて育った。
そこで一緒に暮らしていた人らしい。
酷い態度を取ったとオレも後悔した。
それでも、あんなに嬉しそうな無邪気な顔を、あどけない笑顔をオレ以外の男に向ける柊木を見た事が無かったから、オレは滅茶苦茶に嫉妬をした。
「津々理、笑ってくれ」
泣きそうな、困った顔で眉を寄せて柊木が言う。
思えばオレがこんな風に柊木にするのは初めてだったかも知れない。オレはいつでも自信満々だった、柊木はオレを愛して止まないと信じて疑わなかったから、柊木の傍に誰がいようが誰と話しをしようが、他の男の話しをされても動じる事はなかった。
他の男にあんな顔をする柊木を見た事が無かったから。
何度でも言う、あんな柊木は見た事が無かったからな。
大きく自分を落ち着かせるように深呼吸をして柊木の頭を撫でた。
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