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だけどやっぱり可愛いんだよ
「美味いなっ!」
口の周りにクリームを付けて『モンブラン』を美味そうに食う柊木を、悔しいが愛おしく思えて仕方がない。
… 悔しいが。
「やはりもうひとつ買ってくれば良かった」
五個もぺろりと平らげて、しょんぼりと何もない皿を見る柊木。
「五個も六個も一緒だろ」
呆れてケーキにフォークを入れるオレの手元をガン見している。
「やらねーからな」
チラッと目線を柊木に送り、静かに言うと
「ケチだな」
機嫌悪くひと言だけ返されて、またオレはブチ切れる。
「オレは一個しか買ってねぇんだよっ!」
ふんっ!と柊木は不貞腐れて紅茶を飲み干すと「おかわり」とオレの前にカップを差し出した。
「テメェで入れろ」
そう返したが、駄目だ溢す、と思って仕方ないティーポットを取りにキッチンに向かった。
「ひと口だけ、いいか?」
キラッキラの顔でオレのケーキのフォークを持ってやがる。
いや、オマエのひと口はそのケーキまんまだろ、そう思って
「ダメだ!」
遅かった。
フォークに少しのカステラとクリームが残っただけで、柊木が満足そうな顔でにこにこしていた。
頭にきて柊木に近寄り、口の周りに付いているクリームを思いっきり舐めてやって、口の中まで綺麗に舐めとると赤い顔をして「もっと」とせがむもんだから、そりゃ始まっちまうわな。
ソファーに座るオレの上に跨り、柊木が頬をこめかみ辺りにスリスリしながら、
「津々理好きだ」
と繰り返す。
可愛いヤツだと心の底から思う。
対面で跨る柊木の中に挿れると、膝をソファーに付いて自分でも腰を動かす柊木。
「あん、あん… つ、づ、り… イイ、ああぁぁん、もっと、もっと突いてぇぇん… 」
最中の時にもふっと、ユウトとかいう男の事が浮かんで突く力が強くなる。
訊きたいが聞きたくない。
「津々理、どうして何も喋らないんだ?」
ずっと黙ったままのオレの顔をすんでのところで覗き込む。唇が触れる寸前の距離で。
「ん?」と柊木の頭を押さえて口の中を舌で掻き回す。
こんなヤツだが柊木の、此処ぞという時の空気の読み方は天才的だと出逢った頃から思っていた。
オレが、今日会った柊木の幼馴染の事を考えていたのが分かったんだろう。
「津々理が好きだ。愛してる」と何度も何度も繰り返してキスをする。
オレだって柊木が愛おしくて仕方ねぇよ。
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