止まらぬ嫉妬の始まり

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止まらぬ嫉妬の始まり

「津々理っ!有り難う!凄いな!カッコいいなっ!」 漆黒がベースでまだらに朱色が混ざったボールペン。 普通は『HIIRAGI』とかアルファベットで名入れするんだろうけど、オレの柊木のイメージは漢字だったから『柊木』と入れて貰った。 途轍もない笑顔で飛び上がる程の喜びを見せてくれる柊木にオレも嬉しくなる。 「大事に使うぞっ!」 その日は肌身離さずにずっとボールペンを持っていたが、それでも家ではおっちょこちょいの柊木だ、少し経つと、ちょいちょい置かれたままのボールペンを見るようになる。 オレに気付かれないようにキョロキョロと探し、見つけるとホッとしたように、これまたオレに分からないように手に取り何事も無かったかのように過ごしている。 全部、バレてっからな。 そんなある日の事だった。 「スマホのケース、変えたんか?」 テーブルの上に置いてあった柊木のスマホを見て訊くと、一瞬狼狽えてサッとスマホを取り、 「あ、いや… お客さんから貰って… 」 と背中に隠す。 何だよ、滅茶苦茶に怪しいじゃねぇか。 いつもなら普通に 『ああ、お客さんから頂いてな、今日来店されるから今から交換している』 とかサラッと言うだろ、オレの目が鋭くなった。 「嘘か?」 「う、嘘じゃない… 」 もう、嘘って言ってるようなもんだろ、それ。 なんだ? 言えよ、ギロっと柊木を睨む。 「怒らないか?」 その時点で怒りは決定だ。 「事と次第によるな」 怒るの決定だが一応そう言う。 「じゃあ言わない」 「言えやっ!」 オレの怒鳴り声に柊木がビクッと動いた。 一瞬話そうとして口が動いたが、躊躇ってやっぱり口を噤んだ柊木に察しがついた。 「ユウトとかっていうヤツから貰ったのか?」 ドキッとしたようにオレを見た柊木。 オレが大きく舌打ちをすると、俯いて黙ったまま後ろに隠したスマホをズボンの後ろポケットに入れた。 何だよ、何で隠す必要があるんだよ。 面白くないオレは怒りが収まらない感じで柊木に一瞥を投げると、何も言わずに家を出た。 柊木と、今は話しをしたくないし、顔も合わせたくない。
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