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制服の警察官に案内されて取調室に入って来たのは見た目で間違えるはずがない、大学時代の親友である冬美ではないかーー。
「え、どうしちゃったの?」
彼女とは学生の頃はいつも一緒に遊んでいた。私が警察学校に入った後もしばらくはLINEなどでやり取りしていたけど、私の方から頻繁に連絡が取れないから徐々に疎遠になり、卒業する頃にはほとんど連絡はなく卒業後、こちらから誘うのも気を遣うのでそのまま関係はフェードアウトした。
「彼氏にやられて警察署に来たって聞いたけど、その通り?」
冬美はバツが悪そうにうなづいた。明らかに目線を合わそうとしないーー。
「どうしたの?」
「いや、何でも……ないの」
久しぶりの再会が警察署の取調べ室というのは気まずくない訳がない。それは私も理解できるが、冬美の様子は自分の思っているそれとは何かがずれていた。
しばらくのこう着状態、事情を聞かなきゃいけないのに知り合いだけに話が進まない。それから程なくして交番の若い巡査が、
「ワンぺ持って来ました」
と言って即席粗書きの概要を持って来て私はそれに目を通すと違和感の理由が分かっただけでなく、脳内の記憶がフラッシュバックして固まってしまった。
紙には事件の発生時間と場所、そして両当事者の氏名と年齢、交際に至る経緯が記載されている。そして冬美の相手型となっている男性はーー。
木元 玲也 27歳
私が以前付き合っていた元カレではないかーー
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