三 出会いたくない出会い

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 私は冬美の調書をまとめ、報告のため元カレがいる取調室の前に立った。  扉には鏡が付いていて、中の者には気づかれずに外からのぞき見することができる。見ていいものか、いけないものなのかーー。私は恐る恐る鏡に掛かったカーテンの中に潜り込んだ。 「間違いない……」  まだ夏前なのに、背中から汗が噴き出す感覚を覚えた。  外川主任が取調べをしているその男性。少し垢抜けた感覚はあるが、私が故郷を離れる最後に会った元カレ、木元玲也に紛れもなかったーー。  本当は私が主任にこの報告をすべきなのに、足がすくんでそれができずに、他の勤務員に託すのが精一杯だったーー。
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