01.偽りの幸福論

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帰宅し入念に戸締りする。 ログイン中にトークン強盗に襲われたら大変だ。 プライベートカプセルに入ると生体認証が作動し、現実世界から離脱する。 「ナユタ」 「リンネ」 彼女はメタレルム上の恋人だ。 現実世界のどこに居るのか、性別も年齢も分からない。 「遅いよ。5分遅刻」 「ごめん。オフラインショップでビール買ってた」 「メタレルムでいくらでも疑似アルコール飲めるのに?」 「じゃぁ要らない?」 「飲む」 「たまに本物を欲しくなるんだよね。今、転送した」 特定のマテリアルはゲート技術で転送できる。 通信障害やパラレル干渉で不具合が発生することが稀にある。 過去にはペットや子供を転送しようとして、凄惨な事故が起きたことから、制限がかけられた。 普段は脳内電気信号を操り、飲酒と錯覚させるが、今夜は本物のビールで乾杯。 舞台は人気の居酒屋に設定した。
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